はじめに 


T  京都府スポーツ振興計画の改定に当たって


 京都府スポーツ振興計画は、平成16年から平成25年までの京都府におけるスポーツ振興の目標とそれを達成するための施策を示すものとして、京都府教育委員会が策定したものです。

  平成20年度は、その中間年に当たっており、計画策定当初の予定どおり、この間に実施した施策の進捗状況や成果を確認するとともに、新たに浮かびあがった課題について的確に対応できるよう計画の改定を行う必要があります。

  そのため、府民のスポーツに関する意識、府内各市町村のスポーツ振興に関する取組や現状、スポーツ関係団体の活動状況、そして次代を担う子どもたちの運動やスポーツ活動の実態等を調べてきました。

  これらの現状分析に基づき、平成16年3月に策定した計画を基本として、「施策を焦点化し充実させるもの」、「施策を統合し発展させるもの」、「新たな課題に対応するもの」、さらに「市町村や体育・スポーツ団体等が検討を進める必要があるもの」の4つの視点で検討を加えそれぞれの施策を再構築し、今回、計画の改定として示すこととしました。






U  府民のスポーツや健康を取り巻く状況


 今日の社会情勢や府民のスポーツや健康に関する状況は日々変化しており、今回の改定では、その背景にあるものを十分に分析・検討し、それぞれの施策に反映させることとしました。



【健康・体力に関する現状】
 1 府民のスポーツと健康

 「国民生活基礎調査」(平成19年 厚生労働省)では、「我が国の40歳から74歳の男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が強く疑われる者又はその予備群と考えられる者」という結果が示されおり、これらの人々が実際の病気に罹(かか)るまでに、日常生活を改善し健康を保持増進するための取組が必要になっています。
 このような今日的健康課題である生活習慣病の予防やストレスの発散には、継続的な運動やスポーツ活動が、有効であることは言うまでもありません。
 しかし、その実践を「京都府民のスポーツに関する調査」(平成20年 京都府教育委員会)で見てみると、「スポーツをよくする人(週1回以上):40.0%」、「たまにする人(月に1回〜3ヶ月に1回):22.9%」、「ほとんどしない(年に1回〜3回)、あるいは全くしない人:37.1%」となっています。
 従来のスポーツ振興はスポーツが好きでスポーツを「よくする人」を対象としてきた傾向にあり、現状のスポーツ環境ではスポーツをしている人はますます「する」とういう傾向に、逆にしていない人はいつまでも「しない」という傾向になることが予測されます。すでに高齢者層では「する」と「しない」の二極化が進んでおり、その拡大が懸念されます。

(資料 「運動やスポーツの実施頻度について(前回との比較)」参照)
(資料 「年代別にみる運動実施頻度」参照)


 2 子どもの体力

 「京都府児童生徒の健康と体力の現状調査」(平成19年度 京都府教育委員会)によると、京都府の子どもの新体力テストの結果は、ここ数年、個々の項目においては記録の向上が見られるものもありますが、全体としては、平成20年度実施の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(平成20年度 文部科学省)の全国平均値とほぼ同じ程度という状況です。

 京都府においては、体力の向上について、テスト数値の上昇のみを目指し、トレーニングを課すというものではなく、子どもたちの体力が自然に向上していくための基本動作の習得やその実践過程を的確に把握・分析し、「早寝・早起き・朝ごはん」に代表される基本的生活習慣の確立や、日常における運動時間の確保など、子どもたちの実生活に即した取組を進めるという方向性を示しています。

 子どもたち自身が運動やスポーツを好きになり、日々元気に生活し、学び、からだを動かすことにより、その礎となる体力を高めることが重要です。

 そのためには、学校における体育授業の改善を図るとともに教育活動全体を通じた取組みの工夫や、日常生活における運動習慣の獲得など、家庭や地域を含めた社会総がかりで取り組まなければなりません。

(資料 「京都府の子どもたちの体力について」参照)


【スポーツによる「まちづくり」への期待】

 核家族化、共働き、テレビゲームの普及、安心安全を揺るがす事件・事故の頻発等、我々を取り巻く生活環境の著しい変化に伴い、家族や地域住民相互のコミュニケーション不足が大きな社会問題の一つとして取り上げられています。

 昭和63年、京都府では全国二巡目最初となる国民体育大会を開催しました。これを契機として本府の体育・スポーツは飛躍的に発展するとともに、それぞれの地域でスポーツを核とした風土づくりが進められ、豊かな地域コミュニティを醸成してきました。

 今日の社会においては、このようなスポーツの果たす役割を今一度見つめ直し、これまで以上に、みんなでスポーツに親しむことをとおして、人々の絆を強めることに大きな期待がかけられています。「する、みる、ささえる」等、様々な方法でスポーツに参加することにより、低下したと言われる地域力を再生し、元気な「まちづくり」を推進することは、大変意義深いことです。



【次代に向けたスポーツ振興】

 府内の市町村からのヒアリングや競技団体への活動状況調査によると、「京都国体開催を契機に組織・団体の確立、充実・発展を図ってきたものの、所属する役員や指導者がこの20年間あまり変わらない。」とするところが少なくありません。
 京都府の国体各種別監督を例にとると、その平均年齢は、昭和63年の京都国体時では38.2歳、平成20年の第63回国体では44.8歳と徐々に高くなっています。
 次世代への交代を望むものの、それを引き継ぐことができる若い世代がいなかったり、逆に年長者が、それまでの実績にこだわり、若手登用を認めなかったりする場合も見受けられます。
 長年の経験による円熟・安定した運営や指導にも期待がかかるところですが、10年、20年という長期の視点で考えると、その知識や経験を引き継ぎ、その上で新たなものを創り出すことができる次世代役員・指導者等の育成が重要になります。
 また、スポーツ振興に関する各種事業においても、長年、変化がなくマンネリ化し参加者の減少・固定化が見られる事業も少なくありません。「従来どおり」が労力もリスクも少なく、予算や予定も立てやすいため、その傾向が強くなるものと考えられます。
 今後は、対象としたい府民のニーズを的確に分析して新たな事業の企画・立案を行う必要があります。
 これまでとは違った分野から人材を登用するなどして、新しい目で事業を見ることが大切になります。






V  本計画の目標と今後5年間の各プランのアクションテーマ


 本計画では、策定当初から「だれもが生涯にわたって、スポーツに親しむことができる『生涯スポーツ社会』の実現」を目標として掲げています。



<京都府スポーツ振興計画の目標> 平成16年3月策定

 いきいきと生きがいを持って暮らせる社会づくりに向け、スポーツ活動の実践及び様々なかかわりをとおして豊かなスポーツライフを築き、生涯スポーツ社会の実現を目指す

 だれもが生涯の各時期(ライフステージ)にわたって、それぞれの年齢や体力、目的に応じて、いつでも、どこでも、主体的にスポーツに親しむことができる「生涯スポーツ社会」の実現を目指します。

 そのため、男性も女性も、高齢者も子どもも、あるいは、障害があっても、だれもが生涯にわたり、様々な方法で、日常的にスポーツに親しむことができる環境づくりを進めます。




 その目標達成のため、「生涯スポーツ推進プラン」、「子どもスポーツ充実プラン」、「競技スポーツ充実プラン」の3つの具体的プランを設け様々な取組を進めてきましたが、Uで示したような今日の社会情勢や府民のスポーツや健康に関する現状を踏まえ、今後5年間で府民のみなさんとともに取り組むべきアクションテーマ(行動の指針)を次のとおりとしました。



<生涯スポーツ推進プラン>

 府民スポーツの新たな「広がり」づくり

<子どもスポーツ充実プラン>

 「好きになり」、「進んでする」子どものスポーツ環境づくり

<競技スポーツ充実プラン>

 夢・感動 「もっと元気に」京都のスポーツ


 これらのテーマに基づき、次章から示す各プランでより積極的な取組を進めることとしています。