具体的方策の在り方
 
 
1 生涯スポーツの推進
 
 府民が、日常的にスポーツに親しむことができる環境づくりや、府民スポーツの風土づくりについては、これまでから本審議会としても提言してきたところであり、スポーツを「する」人を中心に、その人口の拡大を図る施策が講じられ、一定の成果を収めてきた。
 しかし、今後は「みる」・「ささえる」スポーツも視野に入れ、スポーツへの参加の多様化を図り、より多くの府民が生涯にわたってスポーツに親しむことができる方策が必要である。
 そのためには、関係者や団体の機能的な連携のもと、それぞれの地域におけるスポーツ活動の特色を生かしつつ、男性も女性も、高齢者も子どもも、障害がある人もそうでない人も、誰もがスポーツに接することができる機会を拡大することが重要である。
 また、より多くの府民がスポーツに接することは、その中から高い資質を持った優秀な人材を見い出す可能性も高まることから、競技力向上の観点も視野に入れた、発展的なビジョンを持つことが望まれる。
 
 
(1)府民の「誰も」が「身近」に「いつでも」スポーツに親しむことができる環境づくり
 より多くの府民が、それぞれの健康管理意識を高め、スポーツの楽しさに触れることができるよう、府民の多様なスポーツニーズを踏まえるとともに、学校以外での子どもたちのスポーツ活動にも寄与できるような施設・設備や、人材、体制の総合的な整備を図ることが必要である。
 また、府民の誰もが気軽にスポーツに親しむことができるよう、施設などのバリアフリー化やユニバーサルデザイン化をはじめとした、環境改善を促進することが重要である。
○ みんながスポーツを楽しむことができる環境の整備
○ スポーツ統括団体である財団法人京都府体育協会の組織・機能の充実
(2)地域スポーツの振興と、さらには競技力向上を目指す、京都府版「総合型地域スポーツクラブ」育成の促進及び「広域スポーツセンター」の設立
 世代や目的・志向の枠を越え、誰もがスポーツに親しむためには、地域住民が主体となって学校・競技団体・関係団体などの連携のもと、「総合型地域スポーツクラブ」を育成することが有効な手だてとなる。
 また、「総合型地域スポーツクラブ」の持つ機能を最大限に発揮し、地域スポーツの振興を支援するため、「広域スポーツセンター」を早期に設立することが必要である。
○ 市町村の特色を生かした、みんながスポーツを楽しむ「総合型地域スポーツクラブ」の育成
○ 「未来のトップアスリート」の育成・強化を目指す、強化型の「総合型地域スポーツクラブ」の育成
○ 「広域スポーツセンター」による「総合型地域スポーツクラブ」の育成支援及び地域のスポーツ振興体制の整備
(3)府民が「集い」、「競い」、「楽しむ」総合的なスポーツイベントの充実 
 府民の日常的なスポーツ活動を推進するためには、個々の活動や、お互いの交流の場及び府民がスポーツに興味・関心を持てるような場の提供が重要である。
○ スポーツ交流の輪の拡大とともに、スポーツの質的向上を目指した総合的なスポーツイベントの開催
○ スポーツの楽しさを普及・拡大させるイベントの開催
 
  
 2 子どもスポーツの充実
 
 
 幼児期から少年期にかけての運動やスポーツの豊かな体験は、その後のスポーツ活動やライフスタイルに大きく影響を及ぼすと考えられる。
 しかし、昨今、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化している。家庭・地域での身近な人々とのふれあいの減少、少子化や生活様式の変化による外遊びの減少など、これまで、子どもたちの成長に伴い自然に培われてきた「身体を動かす楽しさ」や「仲間と一緒に活動するおもしろさ」を味わう機会が減少してきている。
 また、近年、子どもたちの体力低下も問題化しており、中央教育審議会は、「子どもの体力向上のための総合的な方策について(答申)」の中で、将来、このことが、健全な社会づくりに好ましくない影響を及ぼすと指摘している。
 このような状況を改善し、明るい未来を目指すためには、子どもたちが、幼児期から運動やスポーツの「楽しさ」・「おもしろさ」を十分に味わいながら、たくましく元気に成長し、さらには、大人になっても運動やスポーツに親しめるような力を、身に付けさせることが必要である。
 
 
(1)子どもたちの自主的な運動やスポーツ活動をとおして、生涯にわたって自らスポーツを楽しむことができる力の習得
 子どもたちの成長過程の中で、身近にいる大人たちの働きかけにより、運動やスポーツは「楽しい」、「おもしろい」と子どもたちの心の中に根付かせ、子どもたち自身の中から、運動やスポーツへの興味・関心が芽生えるような環境づくりが重要である。
○ 身近な人々とともに、運動やスポーツに親しめる環境の整備・充実
○ 生涯にわたって運動やスポーツに親しむための能力を育成する学習の充実
○ 質の高いスポーツに触れ、大きな夢や希望を抱くことができる体験の充実
(2)子どもたちが、みんなで思う存分、運動やスポーツに親しむことができる機会や場の充実
 これまで、子どもたちの運動やスポーツの実践は、所属する学校での体育や運動部活動などが中心となっていた。
 今後、これらをより一層充実させるとともに、複数の学校の子どもたちが集まって行う運動部活動など、学校の枠を越えた取組も有効な手だてとして必要になると考えられる。
 また、地域においても、子どもたちが、日常的に運動やスポーツに親しむことができる環境をつくることが必要である。
○ 地域において、みんなでスポーツに親しめる環境の整備・充実
○ 子どもたちの興味・関心や志向に応じて、子どもたちがスポーツ活動の場や内容を選択できる体制の確立
○ 多様なスポーツ活動に柔軟に対応できる行事や競技会などの拡充・改善
○ スポーツの一貫指導カリキュラムの策定
 
(3)子どもたちが、運動やスポーツに興味・関心を持ち、より一層スポーツの楽しさを知ることができる指導者の充実
 指導者は、子どもたちの運動やスポーツ活動に大きな影響を与えている。熱心で優れた指導者のもとで、子どもたちは運動やスポーツを実践する力を身に付け、さらには人間的な成長も促されていく。したがって、子どもの多様な興味・関心や目的に応じて適切な指導ができるよう、学校はもとより、地域も含めた指導者のより一層の資質の向上と充実が必要である。
○ 地域において、親しみを持って指導できる人材の育成
○ 学校における体育・スポーツの指導体制及びその人材育成の充実
○ 優れた指導力を持つ人材の有効活用



3 競技スポーツの充実
 
 心と体を鍛え、人間の可能性や記録に挑戦する競技スポーツは、選手自身の人間性を高めることはもちろんのこと、競技を見ている人や支えている人にも大きな夢と感動を与え、日々の暮らしに潤いと活力をもたらしている。
 京都府では、京都国体の開催を契機として、京都府競技力向上対策本部と各競技団体が連携を図りながら強化策を進め、今日まで、国内外の競技会において数多くの好成績を残している。
 しかし、今後、より一層京都府の競技スポーツを充実・発展させるためには、現状に満足することなく、国内レベルの競技会において常に上位入賞を目指すことはもちろん、国際レベルにおいても活躍できる競技者の育成といった、更に高い目標を設定することが求められる。
 そのためには、高い資質を持った人材の発掘、優れた指導者による系統立てた指導、スポーツに対する医・科学的なアプローチの活用などが重要な要因となり、今後、これらを効率よく機能させる体制の確立が必要である。
 また、これらの取組の成果である京都府関係選手やチームの活躍に対し、選手はもとより、府民みんなが、その喜びや感動を共にできるようなサポート体制の構築が望まれる。
 
 
(1)スポーツ関係者がより一層連携し、優れた競技者を育成するための効果的な強化体制の確立
 競技力の向上を図るためには、前述の点に加え、選手個々の特性や発育・発達の段階に応じた指導内容及び指導方法の体系化が必要であり、これらすべてを効果的に実践していくための体制の確立が重要である。
〇 各競技団体主導による一貫指導システムの構築
〇 高いレベルの競技者(チーム)の育成・確保による競技力向上
〇 優れた指導者・専門スタッフの育成及び資質向上
〇 優秀な人材の確保と機能的な配置による強化体制の整備
(2)府民の積極的な参画を伴う、優れた競技者の育成に向けた総合的な支援体制の確立
 府民が、興味を持つ競技に積極的に参加(する)、体験(みる・ささえる)できる機会を提供し、その競技の魅力や醍醐味を直接味わうことにより、一層関心を高め、府民みんながサポーターとして、競技者やチームを支援できるような体制を構築することが望まれる。
〇 トップアスリートの活動を幅広く支持する基盤づくり
〇 選手強化を効果的に推進するための協力体制の整備と連携の強化
〇 府民への競技スポーツ啓発のための場面づくりと質の高いサービスの提供
〇 効率的・効果的に選手強化を推進できる拠点の整備