企画展「うららの海の文化遺産-海と人の持続可能なつきあい方を考える-」では、海洋プラスチックごみの問題について取り上げました。
ところで、下の写真にある筒状のプラスチック製品は何に使われるものか分かりますか?

答えは、牡蠣(かき)の養殖に使われるカキパイプと呼ばれる物です。
これは牡蠣の種苗を付着させるホタテ貝を海中に吊るす際、種苗同士が引っ付かないよう一定の間隔を確保するためにスペーサーとして用いられています。
このカキパイプですが、牡蠣養殖の盛んな地域などでは海洋ごみとして問題になっているようです。
漁師のみなさんもなるべく海にカキパイプを流出させないよう気をつけているそうですが、台風による風や波の影響でどうしても防ぎきれないことがあると言います。

スペーサーとして用いられているカキパイプ
続いて、京丹後市網野町掛津の琴引浜で採取した下のプラスチック製品は何に使われるものか分かりますか?
見覚えのある方も多いのではないでしょうか。

答えは、いわゆる醤油鯛(しょうゆだい)と呼ばれる物です。
主として醤油を入れる容器(液体調味料容器)であり、お弁当などに入れられます。
余談ではありますが、この醤油鯛を研究して1冊の本にまとめられた研究者がいます。
平成24年刊行時、兵庫県立人と自然の博物館学芸員をされていた沢田佳久さんです。
筆者は20年以上かけて100種近い醤油鯛を収集し、それを科、属、種の3つに分類するとともに、製造年代や製造会社等による違いや改良のあり様について詳しく分析しています。
本書によると、昭和30年代に発明された醤油鯛は、当時としてはいち早く使い捨てを想定して作られたプラスチック製品とのこと。
どうやら醤油鯛は使い捨ての文化が急速に浸透していく時代の中で普及した製品のひとつのようです。

今年6月、プラスチック資源の循環利用を促進することを目的として「プラスチック資源循環促進法」という新しい法律が成立しました(令和4年度施行)。
そのことと直接関係するわけではないのですが、今回の企画展の広報用チラシには、「丹後の海の文化遺産で循環型社会について考える」ことをキャッチコピーに掲げました。
丹後半島の漁撈用具等の文化財を通じて、循環型社会について考えたり、関心をもっていただくきっかけとなるような展示構成を工夫したのですが、いかがだったでしょうか。
今後も府民の皆様のニーズや今日的課題の発見・解決に寄与することができるような展覧会を企画できればと思っています。