Loading…

商業と情報の専門学科を設置する京都すばる高校は、規律ある授業と高い目標を持った特別活動を通じて、確かな学力と豊かな心を持った人材を育成します。

 
【 2015/04/02 】

 平成26年度から文部科学省の「中・高校生の社会参画に係る実践力育成のための調査研究」事業を活用し、課題解決型の学習プログラムの研究を進めています。また、27年度から「実社会との接点を重視した課題解決型学習プログラムに係る実践研究」事業を活用し、課題解決に向けた主体的・協働的な学びを推進する取り組みを行っています。

 

平成26年度の取組を掲載します。

【概 要】

 金融経済の学習活動を通じて、社会生活を営む上で必要とされるお金の役割や仕組み・経済活動におけるお金の動き・人生におけるお金とのかかわり・働く目的や生き方を学ぶことで自立した社会人として、積極的に社会参画できる資質と能力を育む学習プログラムを開発する。

 

【学習プログラムのねらい】

・お金の大切さや重要性を理解し、金融経済の機能や知識に明るい人材の育成

・社会経済について深く考える力や課題解決に向けて主体的に行動できる力の育成

・金融経済の動きを探求し、新たな生活・暮らしを提案できる力の育成

 

【学習プログラム】

取組 1年生 2年生
(ファイナンスコース)
3年生
(ファイナンスコース)
(1)税に関する取組
(2)仕事調べ学習
(3)地域金融機関との系統的産学連携授業
(4)ファイナンシャルプランニング
(5)税理士事務所インターンシップ

(会計科希望者)
(6)資格取得の取組

(希望者)

【学習プログラムの主な内容及び具体的な学習活動】

1.税に関する取組(1年生120名)
◇租税教室 (10/7・8・9)
・事前学習

国税庁「高校生の税に関する作文」への応募にむけた調べ学習と講義

・外部講師授業(近畿税理士会伏見支部 税理士1名)

税金の意義と役割および日本の財政の現状についての講義と税金の公平性を考えるグループワーク

・事後学習

日本の財政を良くする方法を考えるグループワークと解決策の提案

◇税に関するグループワーク (10/29・11/7)
・ 提案発表

租税教室の事後学習で考えた日本の財政を良くする方法の提案発表

ブラッシュアップのアドバイスをいただいた

・仕事インタビュー

税に関わるお仕事について、仕事の内容ややりがい、社会人として必要なことなどをインタビュー形式で学んだ

◇新しい税を考える発表会(3/13)
・ 企画書作成

納税の対象者、方法・しくみ、その背景、創るにあたっての課題、その税金で社会はどう変わるかなどを考えさせ企画書を作成

・発表会

クラスでの発表を受けて、代表者を選出し、3クラス合同での全体発表会を実施

会計科の取り組み
会計科の取り組み
 
2.仕事調べ学習に関する取組(1年生120名)
◇仕事調べ学習 (2/6)
・事前学習

インターネットを活用し、興味のある仕事の内容、やりがい、必要な資格や道筋などを調べさせる

・外部講師授業(16分野の専門家、大学や専門学校の先生など)

16分野のうち、興味関心のある2分野を選び、仕事の内容や平均収入などを含め講義を聞くとともに、生徒から働くことの意義ややりがいなどをインタビュー形式で質問をする

・事後学習

調べた内容や講義をまとめクラスで発表

会計科の取り組み
会計科の取り組み
 
3.地域金融機関との系統的産学連携授業(2年生41名 3年生36名)

2年生からコース制を導入し、ファイナンスコース(1クラス)を設け、学校設定科目「ファイナンス」(2年3単位、3年3単位、計6単位)で金融経済を学んでいる。その学習プログラムに2年間にわたる地域金融機関との系統的産学連携授業を取り入れ、課題解決の提案とグループワークのプログラムを実施している。

 

2年生の取組

 
◇課題解決の提案Ⅰとグループワーク(当高校にて府が実施したもの)
・金銭教育分野の取組

課題(1)「もう一度行きたくなる金融機関を提案せよ」

   お客様の視点で金融機関の課題を考える課題解決案の提案発表

   若手職員にインタビュー(グループワーク)

◇課題解決の提案Ⅱとグループワーク(10月~12月)
・経済教育分野の取組

課題(2)「地域金融機関により京都活性化戦略を提案せよ」

   経済の動きを身近な話題から考え、経済的な考え方を基本に社会問題を考え、課題解決案をグループで提案発表

   職員とのグループワーク

会計科の取り組み
会計科の取り組み
 

3年生の取組

 
◇課題解決の提案Ⅲ(当高校にて府が実施したもの)
・投資教育分野の取組

課題(3)「地域を活性化させる金融商品を提案せよ」

   投資家(預金者など)の視点で課題を考える

   課題解決案のグループで提案発表

◇課題解決の提案Ⅳ (6月~1月)
・起業家教育分野

課題(4)「京都を活性化させる起業をせよ」

   起業家の視点で地域の課題を考える

   課題解決案をグループで提案

外部講師授業(中小企業診断士)

「起業に挑戦講座」・・・起業を考えるうえでの、利益計算など採算計画の立て方についてのアドバイスを受ける

会計科の取り組み
会計科の取り組み
 
4.ファイナンシャルプランニング授業(2年生41名)
◇ライフプランニング実習 (2/18)
・事前学習・・・自分を知る・仕事を知る取組を通じて自分の夢・職業観を考え自分の将来をデザインする。
・外部講師授業(生命保険会社)

(1)仮想家族でのライフプラン授業

グループに分かれ、ライフプランナーの進行で仮想家族のライフプランを設計し、その検証と改善策の発表からライフプランの重要性を学ぶ

(2)ライフプランナーの仕事を学ぶ

仕事上の事例紹介から仕事のやりがい、そして、社会的役割を学ぶ

(3)グループワーク

ライフプランの作り方や、アドバイスの重要性、ライフプランナーへの道筋などをバズセッション形式で進行しまとめる

◇ライフプラン発表会 (2/27)

(1)未来設計図の作成

(2)「10年後の私」発表会

会計科の取り組み
会計科の取り組み
 
5.税理士事務所インターンシップ(3年生希望者10名)
◇税理士事務所インターンシップ (夏季休業中)

近畿税理士会伏見支部内5事務所へ各2名が2日間勤務

◇税理士事務所インターンシップ報告会 (10/16)

各事務所から実施報告ならびに、参加生徒からの感想や決意発表

会計科の取り組み
会計科の取り組み
 
6.資格取得の取組 (3年生11名)
◇ファイナンシャルプランニング技能士検定受検

1月25日(日)検定試験11名受験

【成果と課題】

 

成 果

 
1.税に関する取組

 1年生でのプログラムであり、学習、課題設定、調査研究、提案発表の課題解決型学習の手順を税金という身近な課題をとおして学ばせることができた。

 生徒アンケートからは、6割が高い興味関心を示しており、知識理解の点でも大多数が一定の理解があったと評価している。今回の取組でのねらいは、1年生での導入的プログラムとしての位置づけから、税金を通して社会に興味関心を持たせる点であり、8割程度の評価を想定していたため目的を十分に達成できたとは言えない結果となった。

 

○租税教室(生徒まとめアンケートから)
会計科の取り組み
会計科の取り組み
 
○税に関するグループワーク(生徒まとめアンケートから)
会計科の取り組み
会計科の取り組み
 
2.仕事調べ学習に関する取組

 1年生を対象としたプログラムであり、仕事に興味関心を持たせることで、自らの将来の道筋(ライフプラン)を意識させることができた。働くことの大変さに気づき、仕事のやりがいや、その先にある生きがいのお話を聞くことで、3年間の高校生活での学びの重要性を認識させることにつながった。

3.地域金融機関との系統的産学連携授業

 2年生では、金融・経済の知識取得だけでなく、地元地域金融機関との系統的産学連携授業として地域の課題解決型プログラムに取組、地元「京都」の社会的課題に目を向け、解決策を提案発表することで、社会経済の課題を自らが社会の一員として主体的にとらえる力を養うことができた。

 また、グループワークを繰り返すことで、リーダーシップや仕事の役割分担など、生徒たちの中での組織化に取組ことができた。

 生徒アンケートからは、8割以上が積極的に課題発見・課題解決に取り組めたと評価している。グループでの提案としたことで、それぞれのグループでの役割分担や、積極的な意見交換をレポートにあげている生徒が多かったことからも、概ね目標を達成できたと考えられる。次に、社会的視野が広がったかの質問に対しても9割近くの生徒が高い評価をしている。これは、連携先である地位金融機関の職員の方とのグループワークの中で、多くの地元京都が抱える課題や活用できる資源についてお話しいただいた結果によるものと考えている。この部分に関しては、想定の評価をこえる結果が達成できたと考えている。

 連携に関して、インターンシップを受け入れていただいている地元信用金庫様からの御提案で、地元地域に還元できる課題に取組ことで、生徒たちは、住みながらあまり関心のなかった「京都」を発見できる取組となっている。このことで、本取組の方向性を見つけることができた。

 

○課題解決の提案Ⅱとグループワーク(生徒まとめアンケートから)
会計科の取り組み
会計科の取り組み
 

 3年生でのプログラムとして、課題解決型の起業を提案せよという題材に取組ことで、ビジネスとしての視点で社会の課題に向き合い、知識の習得や情報の収集だけでなく、自らが行動する立場に立って物事を考える力を養うことにつながった。

 生徒アンケートからは、約9割が積極的に課題発見・課題解決に取組めたと評価している。3年生卒業課題としての取組であり、2年間にわたる連携授業の中で学習、課題設定、調査研究、提案発表の課題解決型学習が定着してきた成果でもあると考えられる。しかし、「起業」という課題の観点からいえば、利益計画等の点で不十分な点を多く御指摘いただいた。また、新しい発見という質問には、ほぼ全員が高い評価をしている。これは、金融機関様のアドバイスのおかげであることは言うまでもなく、これまでのプログラムの中で「気付き」というテーマをいただきながら進めてきたことは、今、社会が抱える多くの課題に気付き、自ら行動する立場がとれる力を養うことにつながっていると考える。

4.ファイナンシャルプランニング授業

 2年生3学期でのプログラムとして、ライフプランニング実習は、自分自身の将来像を生活者の視点で考えさせることができたと同時に、ファイナンシャルプランニングをビジネスの視点で捉え、将来の自分の職業像として描くことにつながった。そして、金融や社会保障などを学ぶことを社会を支える人物像につなげることができた。

 さらに、自分自身の将来設計を発表することで、コミュニケーション力など社会人基礎力の重要性の認識をさらに深めることができた。

5.税理士事務所インターンシップ

 自分たちが学ぶ簿記会計のプロフェッショナルの仕事に接する機会を得ることで、これまでの学びの筋道を再確認するとともに、具体的な目標設定として位置づけることができた。また、直接仕事現場に立ち会うことで、「働く」ことへの社会的利益志向の考えを学び、社会の一員としての意識を持つことにつながった。

6.ファイナンシャルプランニング技能士検定取得にむけた取組

 3年生でのプログラムとして、これまでの金融・経済の学びの成果の確認と、将来の職業像としてのファイナンシャルプランナーや金融に関わる仕事への直接的な知識習得につなげることができた。

 

課 題

 
  • 学習、課題設定、調査研究、提案発表の課題解決型学習を展開しているが、あくまで、机上のプログラムの部分が多く、今後、提案から実現を目指す、実践的で実学的な要素を取り入れた高いリアリティを持つプログラムへの発展を考える必要がある。
  • 外部連携機関との調整。本プログラムに対する御理解をいただいているが、本来業務の多忙期との日程、時期と、授業展開上の最適時期との調整が必要となる。さらに、新たに連携先を探すことは難しく、今後の大きな課題である。
  • 外部連携機関との評価組織の立ち上げ。外部連携機関での評価を効果的に実施するため、学校と外部連携機関が連携した評価組織の立ち上げが必要である。
  • 生徒の経過評価資料の作成。プログラム実施の過程で、生徒の経過評価(実施前と実施後の変化が見える)の効果的な資料作成が次年度の課題である。
  • 学習プログラムの普及活動。本学習プログラムの他校、他校種への情報発信活動が次年度への課題となっている。