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2022/03/01
 
 

校長式辞

 庭先の草木も芽吹き始め、ひと雨ごとに春の訪れを感じる季節となりました。今日のこの佳き日に、京都府立桃山高等学校 第七十四回卒業証書授与式を、多くの関係者の皆さま方の御協力・御支援のもと、晴れやかに挙行できますことを、心より感謝申し上げます。今年も、コロナ感染症安全対策の一環で、御来賓の方々にお越しいただくことはできませんでしたが、保護者の皆さまには、各御家庭にお一人の無理を申しまして御出席いただき、卒業生の前途を見守っていただくことにいたしました。卒業生はそれぞれに、お世話になった皆さまへの感謝の思いを胸に、今日の晴れ舞台に臨んでくれていることと思っています。

 只今、340名の生徒の皆さんに、卒業証書を授与いたしました。
 卒業生の皆さん、御卒業おめでとうございます。
 皆さんは今日から社会人としての第一歩を踏み出すことになります。誰かから自分の生き方を強制されることがない代わりに、誰かが親切に生き方を導いてくれることも、もうありません。自分の未来は自分で切り開く覚悟をもって、社会人としての第一歩を歩き始めてください。

 振り返ってみますと、卒業生の皆さんは、高校生活の大半をコロナ禍の中で過ごすことになってしまいました。研修旅行は何とか行き先を国内に切り替えて実施することができましたが、楽しみにしていた海外研修や高校生活最後の年の文化祭もやむなく中止となってしまい、期待したような高校生ライフを満喫できなかったと感じている人も多いのではないかと、申し訳なく思っています。ただ、卒業生の皆さんは、何事にも粘り強く取り組み、簡単に音を上げなかった学年だと思っています。そのことが日々の授業態度にも、部活動や行事への参加態度にも、そして受験に向けての頑張りにもよく表われていたと思います。最終進路決定まであとひと踏ん張りというところまで来ました。下級生にとって憧れの先輩として、どうか最後まで皆さんらしさを貫いてください。

 コロナで失ったものは、これまで当たり前と認識していた日常の喜びであり、逆にコロナで得たものは、その当たり前の日常がいかにかけがえのないものであったかを改めて実感できたことだと思います。コロナという未知の相手にどうかかわっていくかという暗中模索の中で、結局は「しっかり自分を見つめること」、そして「自分にできることは何かを落ち着いて考えること」こそベストアンサーであるというのが、ウィズ・コロナから得た私たちの学びではないかと考えます。さらに、このことは、これからの自分の人生に起こる、あらゆる未知のものとの接し方にも通ずるところがあるのではないでしょうか。

 桃山高校での学びを振り返ってみますと、スーパーサイエンスハイスクールにかかわるGS課題研究の取組も、思い出のひとつになっているかもしれません。GSとはグローバルサイエンスの略で、世界的規模の科学精神というような意味ですが、グローバルは世界を一元化した市場と考えるような経済用語として使われることもあります。しかし、その本来の意味は「グローブ」すなわち地球を意味する単語です。サイエンスもまた理数系の真実探究思考というような狭い概念ではなく、実証的に納得解を探す姿勢のことだと私は思っています。つまり「これから先に出会うであろう予測不能な未知の事柄に対して、実証的に納得解を探し続ける、一地球市民としての態度」こそが、グローバルサイエンスの精神であると言えます。このGSスピリットを身に付けた皆さんなら、今後自らの人生を前向きに切り開いていけるでしょうし、周りの人々も幸せの渦に巻き込んでくれることでしょう。そして何より、未来の地球を守り支える存在として大いに活躍してくれることを心より期待しています。

 最後になりましたが、保護者の皆さま方には、お子さまが、本校での高校生活を無事修了され、本日晴れの卒業の日を迎えられましたこと、さぞ、お喜びのことと存じます。教職員を代表し、心よりお祝い申し上げます。これまでお子さまと共に歩んでこられた御労苦に敬意を表しますとともに、本校にお寄せいただいた御理解と御協力に対しまして、深く感謝を申し上げる次第です。誠にありがとうございました。

 それでは、卒業生の新しい旅立ちを暖かく見まもりつつ、卒業生の皆さんの今後ますますの御活躍と御多幸を心からお祈りいたしまして、式辞とさせていただきます。

 

令和四年三月一日
  京都府立桃山高等学校  校長 増 田 恒

 
 
 

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