科学の教室E 地球温暖化とエネルギーについて
 
   〜フィールドワーク〜
 
 2012年7月24日(火) 午前8時〜午後6時  舞鶴・宮津方面
 
  前日の「地球温暖化とエネルギーについて」の特別授業を受けて、マイクロバスに乗って学習テーマに関わった場所を巡るフィールドワークを行いました。地球温暖化に伴う大気や海、そして海洋生物の変化をどのようにして明らかにするのか。またその変化はどのようなもので温暖化がどの程度関わっているのか。二酸化炭素の主要な排出源の一つになっている火力発電所とはどのような施設で、環境に対してどのような配慮がなされているのか。そして二酸化炭素を排出しないバイオ燃料につながる基礎的な研究などについて、専門家に話を聞いたり施設設備を見学してきました。
 
 
Stop1 (9:00〜9:30)  舞鶴市志高
  平成16年の台風23号による由良川増水現場。観光バスの乗客が屋根の上で一夜を明かし全国的に有名になった場所です。
 
Stop2 (10:00〜11:30) 舞鶴海洋気象台
  @「気象観測と気候の変化」と「海洋観測と海の変化」について講義。
  A観測データが集中し予報を出す現業室と、屋外の露場で様々な気象観測機器(舞鶴アメダス)を見学。
 
Stop3 (12:00〜12:45) 舞鶴親海公園・関西電力PR館エル・マーレ
  昼食休憩の後、関西電力PR館エル・マーレで、電気や発電、舞鶴発電所についての展示を見学。
 
Stop4 (13:00〜14:30) 関西電力舞鶴発電所
  平成16年に運転を開始した最新鋭の石炭火力発電所。90万kw(一般家庭200万戸分の電気)の発電機が2基あり180万kwの発電量を誇る。二酸化炭素の排出量を減らすために木質ペレットを石炭に混合して燃焼させています。
 
Stop5 (15:30〜17:00) 京都府農林水産技術センター海洋センター(宮津市)
  @「海洋センターの業務・研究」と「近年の海と海洋生物の変化」について講義。養殖した海藻からバイオ燃料を作る研究のお話。
  A海洋センターで活躍する海洋調査船”平安丸”に乗せていただき、操舵室や観測のための機器や装置を見せていただきました。
 
 
 
 
 舞鶴市志高の国道の歩道。過去の水害での浸水の高さと災害の説明があります。人の背丈の2倍くらいの高さにある赤い表示板が、平成16年の台風23号による浸水の高さです。このすぐ近くでバスが天井まで浸水しました。    舞鶴海洋気象台の講義室。最初に大気や海洋の観測について説明を受けました。きちんと継続的に観測することで温暖化とその影響を正しく把握することができます。とくに観測の難しい海洋の観測装置は興味深いものでした。
     
 
  気象観測機器の説明聞いています。手に持っておられるのが温度計。ファンがついていて中に外気を取り入れ温度を計測します。机の上にあるのが風向風速計。雨量計が転倒マスによって雨の強さを測るしくみはなるほどと思いました。     様々な気象観測データが何台ものパネルに表示される現業室。ここで予報官が予報を出します。この部屋にはたくさんの機器が所狭しと並んでいて、まさに舞鶴海洋気象台の頭脳にあたる場所です。
     
 
 屋外に出て柵に囲まれた露場に入らせていただきました。ここは無人気象観測施設(舞鶴アメダス)で、温度計、雨量計、感雨計、積雪計などの気象観測機器が並んでいます。舞鶴の気温はここの温度計の観測値が使われます。奥の建物が気象台が入っている合同庁舎です。    これが雨量計です。中央の丸い容器に入った雨を測定します。水が下に流れ込む所にはゴミを取り除く金網が見えます。冬期には筒がヒーターで暖められ、雪を溶かし水にして降水量を測定します(積雪量は積雪計で測定します)。周りの灰色の円形の板は風除けのようです。
     
 
 後ろの船は石炭の積み下ろし作業中の石炭貨物船です。船の全長は200mほどある巨大な貨物船で、世界の複数の国から石炭が運び込まれています。写真のように発電所の敷地内では安全のためにヘルメットをかぶります。    接岸した貨物船から石炭を積み下ろす施設です。間近で見るとその大きさには圧倒的なものがあります。発電所は石炭を燃やし水を沸騰させ発電機を回し発電し、燃焼ガスから有害物質を取り除き環境中に排出する施設です。発電所のしくみは比較的単純で分かりやすいものですが、その施設・設備のスケールの大きさは実際に見学しないと分からないものがあります。
     
 
 一段高い所から発電所を眺めています。左に並ぶ5つの円筒形の施設が石炭サイロ。石炭を貯蔵する施設で高さはそれぞれ80mもあります。右に見える施設がタービン建屋で90万kwの発電機が2基入っています。発電機一基が発電する90万kwの電力は一般家庭200万戸分の電力です。計算上は京都府(人口260万人)の全ての一般家庭の電力をたった一基の発電機で賄うことができます。    右の容器に石炭、左の容器に木質ペレットが入っています。石炭は太古の昔に生物に取り込まれた二酸化炭素が地層に埋没して形成されるので、燃焼すると大気中の二酸化炭素が増えます。しかし現生の樹木は現在の大気の二酸化炭素から作られているので、燃焼しても大気中の二酸化炭素は増えたことにはなりません。石炭に木を混ぜて燃焼させることで大気中の二酸化炭素の増加を抑制することができます。
     
 
 海洋センターの講義室において、日本海で獲れる魚とその変化について講義を聞いています。スクリーンに映っている魚はブリとサワラ。サバの仲間であるサワラは近年京都府が漁獲高全国一位になっています。獲れる魚の変化を見てみると日本海の海水温が確かに上昇している事がよくわかります。これは地球温暖化の影響の一つだと考えられます。    海洋センターの海洋調査船”平安丸”は、全長43mで総トン数183tの船。様々な観測・調査機器を積み主に日本海の海洋調査を行っています。船の航行を操作する操舵室や研究室、船に搭載された様々な観測・調査機器を見せていただきました。船の形は今も昔もそれほど違いはありませんが、GPSやコンピューターを駆使して船の操作は自動化が進んでいます。 
     
 
 
  参加者の感想:
 
  ふだん何気なく使っている電気ですが、作る所では様々な事が考えられ最新の技術が使われている事がわかりました。災害はいつ起きるか全く分からないし、温暖化によって気象災害は増える傾向があるので、きちんと対策をしておく必要があると感じました。気象庁は正確な温度や雨量を測るために工夫をして、また毎日欠かさず記録を付けて大変だと思いますが、その積み重ねで地球の温暖化を明らかにする事ができ、早めの対策を行うべきだと思いました。(3年生)
   
   気象台では、機械を使って観測したり目で観察したりして、予報を出したりしている事を初めて知りました。天気予報を出すのにたくさんのことを観測しなければならなくて意外とたいへんな仕事なんだと思いました。舞鶴発電所は石炭を使った火力発電所ということを知らなかったので、というか舞鶴に発電所がある事すら知らなかったのでいい勉強になりました。環境のことを考えて施設を二段造成にしたり、放水するのに2.5kmも離れた場所まで送ってから放水していることなど、いろいろ知ることができて良かったです。ふだん見る事がない発電所内を見る事が出来て良かったです。海洋センターには海洋調査部と生物部という二つの部があり、海の環境変化や水産資源の予測、技術の開発などいろいろなことをされていると知って驚きました。”海洋センター=養殖”みたいなイメージがあったので、詳しく知ることができて良かったです。調査船の中も見れておもしろかったです。とても有意義な一日だったと思います(1年生)
  由良川浸水地点では、自分の背よりもはるかに高い浸水時の水の高さを見て驚きました。近くの家を見ると、二階まで水没していたことになります。この辺りは最近、川の堤防の他に高い壁みたいなものを作っているそうです。少しでも被害が少なくなればいいなと思います。気象台では観測機器や観測方法について学びました。それぞれに特徴があり、観測している所の地面はアスファルトだと太陽光を反射して暑くなるので土と芝生にしてありました。よく考えられていると思いました。舞鶴海洋気象台では海の警報も出している事を初めて知りました。また虹などの気象現象も記録される事があるということも知りました。火力発電所では石炭とおがくずを混ぜる事や、敷地の利用を工夫して多くの森林を残すなど、環境に配慮されている様子が目立ちました。また燃やした後の灰の処理などもとても工夫されていました。石炭は世界の至る所で採掘でき、埋蔵量も比較的多いので、石油よりもよい燃料に思えました。実際はどうなのでしょうか?海洋センターでは丹後の海で獲れる魚の変化について学びました。今は京都府が漁獲量日本一のサワラも昔は全く獲れなかったそうです。温暖化による変化なのだそうです。また調査船にも乗せていただきました。難しい器具がたくさんでわからないことも多かったですが面白かったです。(1年生)