科学の教室B “京都大学宇治キャンパス公開を見学 〜科学の現場を体験!〜
 
 2015年10月24日(土) /京都大学宇治キャンパス
 
 京都大学宇治キャンパスには、防災研究所、化学研究所、エネルギー理工学研究所、生存圏研究所などの自然科学系の研究所と、工学、農学、エネルギー科学の3つの研究科(大学院)などがあり、のべ1900名もの教職員と学生が研究をしています。宇治キャンパスが一般公開(10/24,25)されるこの日、1年生21名、2年生2名の計23名の生徒の参加で見学に行きました。
 キャンパスに到着するとまず防災研究所の建物に行き、地震予知研究センターの加納先生に地震について講義をして頂きました。20年ほど前の防災研究所所長の田中寅夫先生が本校の卒業生であるという話から講義は始まり、地震の規模を示すマグニチュードを地震計記録から求める方法や、昔の震災を書き記した古文書からマグニチュードを推定する方法等、地震について幅広く教えて頂きました。講義の後でテレメータ室を案内して頂きました。ずらりと並んだモニターの画面には、防災研究所が各地に設置した地震計から送られてくる地震波形がリアルタイムで表示され、地震の観測と研究の現場を体験することができました。
 その後はバスの出発まで約3時間の自由行動。生徒達はガイドブックを片手に関心のある研究施設を回り見学しました。実験装置やポスター等を前にして研究者や大学院生の説明を受けることで、科学の現場を感じながら楽しく学ぶことができ、大学がより身近なものに感じられたのではないかと思います。
 
 
 
 
 防災研究所の地震予知研究センターの建物の前で全員で写真。    スクリーンに映っているのは防災研究所の元所長の田中寅夫先生。田中先生は峰山高校の卒業生です。
     
 
 加納先生の講義のタイトルは『地震をはかる』。地震計を使って地震の震源やマグニチュードを求め、地震の研究が進められます。    地震予知研究センターのテレメータ室。モニターには各地の地震計から送られるデータがリアルタイムで表示されます。
     
 宇治キャンパスは甲子園球場16個分の広さのキャンパスで、子どもからお年寄りまで多くの人が見学されていました。  観測機器を気球で上昇させ気象観測をするデモ実験。モニターには刻々と変化する観測データが表示されていました。
 
 未来の核融合をめざすエネルギー理工学研究所の実験装置ヘリオトロンDM。プラズマを磁場によって封じ込める装置です。     エネルギー理工学研究所の高度マイクロ波エネルギー伝送実験棟の内部。マイクロ波で電気を送る研究が行われています。
     
 
 防災研究所の強震応答実験棟。装置に設置された木造家屋等を揺らし、建物の構造や居住空間の様子を再現します。    化学研究所の放射実験室。加速器から発射した放射線を当て、発生する光を調べることで元素組成が分かります。
     
 
 防災研究所の地震予知研究センター。小麦粉とココア粉で作った大地に力を加えて断層を作るデモ実験です。     化学研究所の極低温電子顕微鏡。シリコン(ケイ素)の結晶表面に整然と配列したケイ素原子の粒が見えました。
     
 
 
  参加者の感想
 強震応答実験棟では、震度6弱などの地震の実験を見て、普通の家組みと壁柱で作った家組みでは大きく違うことに驚かされました。この実験を見て、壁柱は将来間違いなく利用されるだろうと感じました。しかし普通の家に比べてより多くの材料が必要になるのでコストはかかりそうでした。風を感じる体験では、10m/秒の風を体験したのですが、思った以上の風に正直驚きました。良い体験ができたと感じています(2年・男子)

 今回の「科学の教室」では、地震の測り方や被害、風が家に与える影響やそれを防ぐための家造りなどの専門的な知識を学べました。それだけでなく、大学とはどういう所かや学生たちはいつもどんなことをしているのかという、大学の雰囲気を味わうことができました。(2年・男子)

 私は「科学の教室」で初めて大学に行きました。大学の雰囲気を知ることができて良かったです。特別授業では地震を測る道具について、マグニチュードと震度など、いろいろな事を知ることができました。自由時間はとてもいい経験をすることができました。スーパーボールを作る公開ラボでは、どんなものを材料にするのか、何を混ぜれば固まるかなど、実際に自分で体験することによって知ることができました。ちっちゃい子たちもたくさんいて、どの年代の人でも楽しむことができる素晴らしさを知りました。レーザーの公開ラボでは、実験を予想しながらレーザーを体験し、虹色に見えるボードみたいなものを使ったりいろいろなことができました。時間があっという間に過ぎたけれど内容の濃い一日になりました。来年もあればまた行きたいです。(1年・女子)

 地震を測定する時には今はコンピュータを主に使っていることや、地震について細かく知ることができて良かったです。またスーパーコンピュータでゲノムを読み解く研究や、オーロラの発生原理の研究、放射線を当てて物質の正体を確かめる研究など、これまで学校で習ったことと繋がっていることや、身近なもののより深い側面や大きな部分を垣間見ることができたと思います。(1年・女子)

 今回は大学見学2回目だったけど、いろいろな実験や主に理系の事がいっぱい知れて良かった。小さい人にでもよく分かるように工夫されていて、高校生や中学生でも分かりやすかった。そういう所がやっぱり大学っぽかったと思う。大学がより現実的に考えられるようになった。また今度もこういう企画を考えてほしいです(1年・女子)

 宇治キャンパスでは体験したことがとても印象に残っています。一からものを作り出す、みたいな事を実際に体験するのは不思議だったし、見るのと実際にするのとでは全然違うのだなと思いました。地震についての講義も聞き、今までに聞いたことのないような事や、地震計測などに用いられる機器など、普段ではとてもできないようなことができ、自分にとって良い経験となったし、有意義で充実したものになりました。(1年・女子)

 自分は京都大学が行っている防災についての研究を見てきました。さまざまな複雑な機械を使い、情報を集めたり整理していました。また防災研究所の中で4つの研究グループに分かれ、部門ごとに詳しく調査していました。災害のメカニズムや、災害を予知し被害を減らす技術の洗練といったような内容でした。日本は災害が多い国なので、このような研究の大切さを身に染みて感じます。ですからこういった京都大学の研究は、必要不可欠なすばらしいものだと思います。(1年・男子)

 京都大学では、地震の講義や液体窒素の実験など4ヶ所に行きました。そこでは核融合で水素と水素をぶつけ中性子を飛ばすことでウランを見つけることができるという研究や、電子顕微鏡の技術がどれほど進んでいて、どのようなことに使っているか聞けました。地震の講義では現在までに起きている巨大地震や、どのような場所で地震が起きて、どのような場所で起きていないかなどを聞けました。来年もあるならばまた行って見れなかったところを見たいです。(1年・男子)

 4年前に続いて2回目の宇治キャンパスの見学でした。実験室や研究室を公開する「公開ラボ」で印象に残ったのは、放射実験室。イオンや電子を光速の20パーセントのスピードで飛ばすための「加速器」が設置されていました。その装置は大きめ部屋を埋めつくしています。4年前にも別の研究室で加速器を見せてもらいましたが(宇治キャンパスには加速器がいくつもある!)、残念ながらわれわれ素人にはその活用法がいまひとつわかりません。ところが今回は加速した水素イオンを物質にぶつけ、発生するX線を解析して素材を調べる実演が行われました。見学者の持っている硬貨や鍵が何でできているのか。過去には「プレゼントされた指輪を調べてほしい」という見学者がいて、「調べて安物だったら一大事!」というプレッシャーを感じながら検査したこともあったそうです。ちなみに、無事に本物のプラチナだと実証されました。また、加速したイオンや電子も放射線(粒子放射線)といい、これについてはエネルギーが低く被ばくの心配はないとのことでした。
 今回は、特別講演会も受講しました。自由行動の時間内に聞けたのは「宇宙太陽光発電とワイヤレス給電」で、天候や昼夜に左右されない宇宙空間で太陽光発電した電力を電波に変えて地上に送るというものです。電波の利用といえば、テレビや携帯電話やGPSなど信号のやり取り以外に、電子レンジがあります。高いエネルギーを持つ電波を発生させて照射し、それを熱に変えるのが電子レンジの仕組みですが、電波のエネルギーをまた電力に戻すのがワイヤレス給電です。ことしの2月3月には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や民間の企業と共同で、それぞれ500メートル、55メートル離れた場所へのワイヤレス送電の実験を行い成功したとのことでした。時間の都合で、その研究所を見学することができませんでしたが、帰りのバスの中で実際に見てきたO先生から話を聞くことができました。(T先生)

 研究のための装置や設備がとても充実していて、しかも木々や芝生などの自然もたくさんあり、研究をしていく環境としてとても素晴らしいキャンパスだと思いました。放射実験室では、イオンを加速して放射線として物質に当てるだけで、物質を壊さずに、その物質がどのような元素でできているかを調べる事ができることを、実際の装置を動かして分かりやすく説明しながら実演していただきました。総合研究実験棟では、DNAの情報を蓄積・計算するためになぜスーパーコンピューターが必要なのかについてや、また、オーロラのできる原理をシミュレーションを用いることでさらに詳しく解明することができた研究成果についてなど、非常に分かりやすく噛み砕いた表現で丁寧に説明していただけて、各分野の最先端の内容に触れる事ができたのがとても良かったです。(Y先生)

 エネルギー理工学研究所で見学した、電波の一種であるマイクロ波で電気を送る実験が印象に残っています。電波を吸収する特殊なウレタンを壁面に貼りつけた実験棟の内部で、部屋の中央に実験装置を置いてマイクロ波(電波)で電気を送る実験をされていました。現状では僅かな電力をたった10mの距離を送る実験の段階ですが、将来的には自動車、航空機、離れ島などに電線を使わずに電気を送ることが目標です。さらには地球から42000km離れた静止軌道上に巨大な太陽光発電装置を造り、発電した電気をマイクロ波で地球に送るという「宇宙発電」の壮大な目標も話して頂きました。将来、人類に大きく貢献するかもしれない基礎的な研究を、一歩ずつ進める研究者の地道な努力を垣間見ることができました。(О先生)