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僕たちはまだまだ発展途上。新たな視点を探して~「古代文明から社会問題を紐解く」~VOL.1《社会人との対談編》

 

「すみません、古代文明や現代社会について詳しい大学の先生と

繋いでいただくことはできるのでしょうか」


私にそう声をかけてきたのは「古代文明の滅び~人類の未来~」をテーマに調べているグループの男子生徒たち。


まずそもそも、なぜ彼らが私にこういった相談を持ちかけてきたのかについて、
簡単に説明しましょう。


***

私は、現在峰山高校の総合的な探究の時間「いさなご探究」の授業運営やサポートをしています。

立場は、地域おこし協力隊員。つまり、学校にいながら学校の先生というポジションではありません。


それでは先生じゃない人が、授業でどんな役割をしているの? といいますと、
学校と地域の間に入って、生徒と地域の方々を繋ぐお仕事をしています。


忙しい日常生活の中で、高校生が普段接している大人の数は非常に限られています。

ご家族の方、学校の先生、習い事やバイト先の先生や先輩を除けば、

ほとんどその他の大人と関わる機会はないのではないでしょうか。

でも、それはあまりにも勿体ない!!

実は、この京丹後エリアにはワクワクするような取り組みをしている大人たちが

たくさんいて、「こんな生き方あったのか!!」と私自身
毎度驚かされるということが、日常的に起こっています。
もちろん課題もたくさんありますが、
そんな中でも日々の小さな幸せを積み重ねて、

素敵な生き方をされている大人の姿をぜひとも若いみなさんにお伝えしたい。
丹後ってこんなに面白いところだったんだ、と気づいてほしい。

そんな想いで、日々仕事に取り組んでいます。

***


さて、話を戻しましょう。
相談を持ちかけてきてくれた男子生徒たちはその時、探究活動に行き詰まりを感じていたのです。

どうやら彼らは、古代文明がなぜ消滅したのかについて様々な仮説を調べる中で、

「もしかしたら古代文明が滅びたという現象は、現代社会で起こっている様々な問題と

共通している部分があるかもしれない。そう仮定した場合、今自分たちが生きているこの社会も

消滅する可能性があると考えられるのではないだろうか。

そんなことになる前に自分たちができることを何かしたい。果たして何ができるだろう?」

といった考えに至ったということをお話してくれた上で、

ただこの後、どのような切り口で、どこに終着点を持っていったら良いか、

自分たちだけでは煮詰まってしまって、何か新たな視点を取り入れたい、とのことでした。

まず驚いたのは、彼らの着眼点。
これは非常に面白い。
「古代文明の消滅から現代の社会問題との共通項を見つけ出す」って、凄くないですか!? 

よくそんなこと思いついたなぁ、と感心してしまいました。

それと同時にこのテーマの難しさも分かりました。
現代社会の問題一つとっても世の中には数え切れぬほどの問題が山積み状態。

しかも、それらは複雑に絡んでいるのでそれらを紐解いていくにも

相当な労力が必要となるでしょう。


しかし、このままではせっかく面白いところに目をつけているプロジェクトが停滞してしまう...!


初め、彼らは古代文明や現代社会の問題についての知識をより深掘りするために

専門的な知識を持っている人と話したらヒントがもらえるのではないか、と考え

大学の先生とお話ができないか、という相談を持ち込んできましたが、

こうやって話を聞いていくと、「新たな視点、自分たちでは思いつかなかった切り口」を

発見したい、ということだったので話を聞く対象を「大学教授」と絞らずに、もっと

広げてみてはどうか、という提案をしました。


そんな流れの中で、彼らが発案したのは
「古代文明消滅から社会問題を解明する会」を実施すること。

この企画に関心を持ってくれた大人たちと一緒に対話をしよう、という企画です。

古代文明企画発案.jpg

そしていざ、この企画について告知してみると驚くべきスピードでメンバーが集まりました。

「古代文明」というワードに魅力を感じている大人がたくさんいることが分かった瞬間でもありました。

これは、ますます面白くなってきそうな予感...!!


いよいよ、「古代文明消滅から社会問題を解明する会」の実施日。

発案者である高校生メンバーはというと、緊張を隠しきれない様子。

そうこうしているうちに参加者たちが続々と集まってきます。


牛や鹿を愛してやまない大学生や、できる限り自然と共存しながら原始的な生活に挑む人、

新しい形の農業ビジネスを開拓しようとしている人、公共政策を学ぶ福井在住の大学生など

個性豊かな人たちが参戦。

緊張気味の高校生メンバーでしたが、今まで出会ったことのないような素敵な大人たちを目前にして、

その魅力に魅了され、自然にコミュニケーションをとろうとする姿が見られました。

古代文明全体図(話し合い).jpg 古代文明高校生メンバー.jpg

いよいよ「高校生×古代文明と社会問題に関心のある社会人」の対話がスタート!


「そもそも文明ってどういうもののことを指すんだろう?」

その問いかけに対し、

「昨日よりも良いと思える生活を目指すこと、なのでは?」と誰かが答える。

「でもより良くなる、便利で豊かな生活になると信じて生産されたものがある一方で、

失われるものってあるよね。例えばどんなものがあるかな?」


「現代社会の様々な問題って、掘り下げてくと"お金"という概念ができたことで生まれているのかもしれないね」


「豊かさって何だろう。私たちが今享受している"豊か"だと思われるものって、

環境などが変われば実はそうじゃないかもしれない、という考え方もできるよね」


「地球における人類の立ち位置ってどこなんだろう?

人類の生活も変化しているから、変化とともに生活スタイルも変わる。

時代とともに技術も発達している訳だから、過去にはできなかったかもしれないけれど、

その技術をもって今だからこそ解決できることも増えているんじゃない?」


一つのテーマについて、経験も価値観も異なる人たちが話せば

「そんな考え方があったのか!その切り口面白い!斬新だなぁ!」と目から鱗状態に。
古代文明ポストイット.jpg

この時間特に印象に残った言葉がありました。

「自分の価値観を疑ってみる、そういう視点が大事」


これは良いものだ、あっちは悪いなど世の中では、ある物事についての善し悪しが

問われることがしばしば起こっていますが、それって誰にとって良い(悪い)ことなの? 

そもそも善し悪しを判断しているのは、誰なの(どんな立場の人)?
その概念って本当に信頼していいの? と、ちょっと離れたところから捉え直すことが

重要です。それによって気がつくことが議論をする上で、大切なポイントになったりします。

高校生たちは、多くの人と話しを深める中で自分たちが次にどの方向に舵を切れば良いのか、

少し見えてきたようでした。


まだまだ発展途上。だけど、きっと面白くなる。

そんな明るい未来を感じさせてくれるプロジェクトが、ここから再始動しました。

                                                《続く》

 
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