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丹後にまつわる鬼伝説を紐解く~私たちのルーツを知った日~

 

「丹後の鬼伝説について調べたい」


このプロジェクトのもともとの始まりは、神話や神秘的なものが好きなある生徒からの提案でした。

「丹後にはたくさんの伝承が残っているけど、どういったいきさつでこのような物語が生まれたのか、歴史を紐解いていくと面白そうだ」

というのが根底にあったようでした。彼はもう一人を誘って「丹後にゆかりのある伝承を掘り下げ、その魅力に迫る」プロジェクトを立ち上げました。


そこで初めに、丹後の人なら一度は耳にしたことであろう「七姫伝説」について取り上げることに決めました。


彼らが調査に選んだ方法はフィールドワーク。

実際に七姫にゆかりのある場所を訪ね歩いて、順番に廻ろうとしました。

しかし、序盤でつまずくことに...。


実は七姫伝説にゆかりのある場所は想像以上にたくさんあり、それら全てを巡ろうとするととてつもない時間がかかるということが分かりました。これではフィールドワークの後の考察の時間が十分にとれない、ということで再度テーマ設定の見直しを。


「何かもう少し範囲が絞れて、面白そうな丹後の伝説はないだろうか」

そこで目につけたのが「鬼伝説」でした。


2人はまず手始めとして、ネットや書籍から自分たちで調べられるだけ鬼について調べ上げます。調べてみて分かったのは、「鬼」というのは何かの比喩に例えられている説が濃厚であるということ。


2人は「丹後の鬼伝説」の「鬼とは何か」という問いに対して、

「鬼とは邪悪な怨霊であり、姿が見えず、この世ならざるもの」という仮説を立てました。

その上で、次のステップとして伝承に詳しい地域の方からお話しを聞くことに決めました。


そんな流れの中で、2人が出会ったのは飲食店を営んでいる田茂井義信さん。

実は田茂井さん、丹後の伝承に詳しくなったのはここ2・3年の間なのだそう。

飲食店を経営される中で、出会ったお客様が「究極の歴史マニア」だったことから知らず知らずのうちにその魅力にどっぷり浸かっていたそうです。


生徒2人は、事前の調べ学習で「鬼と鉄」が深い関係にあるということを知り、それがなぜなのかについてさらに深いお話しを聞きたいと考えていました。

鬼チーム①.jpg

「鬼と鉄」

実際にお話しを聞いてみると、それは遥か昔の丹後地域と海外との交流がルーツであることが分かりました。私たちが日本史で一般的に習うのは、渡来人たちは大陸を渡って朝鮮半島から海を出発し、対馬半島を経て九州に上陸し、そこから北上したというルートでしたよね。だから北九州を中心にたくさんの遺跡が発掘されています。


ですが、驚くべきことにその北九州に匹敵する数の遺跡が丹後地域のあらゆる場所で発掘されているというのです。つまりここから分かることとして、北九州を目指して朝鮮半島を出発した渡来人たちの一部は、天候などの影響で「正規ルート」から外れて海を漂流し、丹後にたどり着いたということ。丹後が海外から渡ってくる人々の窓口だったというわけです。


そんな渡来人たちが伝えたものの一つに「鉄の技術」があったのです。

鉄の技術が入っていて、飛躍的に国が豊かになりました。

しかし、この後問題が起こってきます。豊かな国の周りの未発達な国の人々は、技術を奪おうと侵略をしてきます。 それに対して豊かな国(丹後もその一つ)は、武力をもって立ち向かうのです。


そう、「鬼伝説」の元々の始まりというのは豊かな国側から見た「侵略してくる国々に立ち向かったという武勇伝」と「相手国を侵攻したことに対する正当化」として語られる物語として生まれたのです。要するに鬼は「人間」の例えであったのです。

鬼チーム②.jpg

この話を聞いて、2人は衝撃を受けました。鬼が「人ならざるもの」以外のこと、人そのものを鬼と例えることがあるという事実に驚かされたのです。


もちろん、2人が考えていたように鬼が「怨霊や姿の見えないもの、人ならざるもの、魔よけの役割」として語られることもありました。

時代によって、鬼の意味するものは変わります。

例えば、丹後地域には複数の神社で鬼が祭られていたり、鬼の紋章が彫られていたりします。

それは当時、祟りや怨霊を信じていた人々が封印や供養の意味で鬼を用いたのです。


最後に鬼に出会える神社の場所を聞いて、対談は終了。

生徒たちは今回、聞かせていただいたお話しをもとに再度フィールドワークをしてロードマップのようなものを作りたい、と意気込んでいました。


その後、2人にプロジェクトの進捗状況を伺うと

「人から話を聞くことで、自分たちが調べていたことの外側にも面白い物語が広がっていることが分かり、さらに神話や伝承といったものの魅力を知ることが出来ました!」

「丹後で生まれ育ったけれど、今回初めて自分のルーツについてじっくり考えることが出来ました。これから違う地域に出たとしても、自己紹介ネタとして語れることができたので良かったです!」

との返事が返ってきました。調べれば調べるほど、伝承の深みにはまっていき、今は時間が足りないと感じるくらい、面白いそうです。


 
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