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「どうして"ドラッグ・ラグ"という問題が発生するの?」 ~元看護師の方へ高校生がインタビュー~

 

2年生のいさなご探究の授業でのこと。

これから約1年間かけて、何について調べるのかそのテーマを設定する時間に

ある生徒はこう考えました。


「コロナ感染がどんどん拡大する昨今、どうして効果のあるとされる薬が出てこないのだろう? "ドラック・ラグ"の問題を解決する方法はないのだろうか」


そもそもみなさんはご存じでしたか?

「ドラック・ラグ」という言葉を。


恥ずかしながら私は、つい最近まで知りませんでした。それこそ、生徒が探究テーマとしてこの問題を取り上げたことが知るきっかけとなりました。


「ドラッグ・ラグ」とは、新たな薬物が開発されてから、治療薬として実際に患者の治療に使用できるようになるまでの時間差や遅延のことを意味します。

日本においては、日本国外では既にその使用が承認されている薬剤が、国内では使用が認められていないことや、承認の遅れを意味して使われます。


感心したのは、その生徒がまず自分が調べられる範囲においては徹底的に「ドラッグ・ラグ」について学習していたこと。その上で、その情報が正しいのか、実際の医療現場は現在どのような動きがあるのか、また彼女なりに「ドラッグ・ラグ」をなくすための解決策をいくつか考えた上で、医療について詳しい方にお話を聞きたいと相談をしに来てくれました。


そのような流れの中で、今回彼女が出会ったのは広田幸子さんという方。

元看護師として長く医療現場で勤めていて、今は東邦大学の教育・研究支援センターに勤務されてるそう。海外経験もあるとのことで、豊富なお話を聞くことができそうです。


さっそくzoomで繋いで、インタビューを開始!!

「そもそもどうしてドラッグ・ラグといった問題が起こっているのでしょうか?」

その質問に対して

「例えば海外である薬の効果が認められて使用されていたとしても、もしかすると日本人の体質には合わないかもしれない。それをきちんと確かめるために治験をしないといけない。それに要する時間が、つまり"ラグ"として生まれているの」


ですが、この問題は裏を返せば「薬の安全性」はしっかりと担保されているということ。

つまりマイナスの面とプラスの面は、いつも表裏一体なのです。

また日本と海外では「倫理感」が異なるが故にラグが発生しているというケースがあることも分かりました。


他の質問に関しても、これと同じように「ある1点から見ると悪いように見えるけれど、異なる視点から捉え直してみるとまた違ったように見えてくる」ということが起こってきました。


さらには製薬会社と研究機関が連携して薬を開発する際に起こる利害関係などの問題や、薬の承認をする機関が抱えるジレンマのお話など現場のことをご存じだからこそ聞けるようなお話をたくさんしていただきました。

生徒は身を乗り出して聞きいっており、話の中で出てきた新たな疑問や自分が考えた解決策が何かで役に立ちそうかどうかなど、真剣に込み入った話をしている姿を見ることができました。


広田さんが彼女に教えてくれたのは、「自分一人だけではどうしても太刀打ちができない問題に向き合ったときに、どうすればその問題について一緒に考えてくれる仲間を集められるか」が重要だ、ということ。

それを聞いた彼女は、まずは自分が調べたことや学んだことを身近な人から伝えていく、どんどん発信をしていくことから始めたいと話していました。


インタビュー終了後には、「知りたかったことを全て聞くことができました!大満足です!!」とスッキリした表情を見せてくれたことが印象的でした。とても有意義な時間を過ごすことができたようです。


この会を経て分かったのは、調べ学習だけではある一つの視点に偏ってしまうケースが起こり得るということです。自分が仮定した説の信憑性を調べるときに、どうしてもその解釈に都合の良いものばかり選び取ってしまう、ということがあるかと思います。しかし、異なる視点から捉え直したとき、その仮説を改めて見直さなければならないことが出てくる。

でも客観的な立場に立って、そのことを「それ、もしかしたらそうじゃない可能性もあるのでは?」と指摘してくれる人がいないと、自分だけでは中々気づきにくい。


だからこそ、人からお話を聞く機会というのはすごく大切なことなのだと改めて実感しました。これから他の生徒たちもぜひ積極的に他者の話を聞くことを行っていってほしいと思います。

 
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