学校生活School Life

人文科学の教室(8)国際関係学

 

3月13日(水)の放課後に、本校英語科教諭の武智美和子先生、本校地歴・公民科教諭の百々貴紀先生に、「移民問題を議論する」というタイトルで講演をしていただきました。
 今回は、「あなたは移民を受け入れますか」という答えのない問を参加者全員で議論しました。受入賛成派・慎重派それぞれのデータや根拠に触れ、最初に考えていた自分なりの答えが、グラグラ揺らいでいく。知識は深くなっているのに、ますます答えが出にくくなるという体験をすることができました。講演では、複数の映画のシーンをもとに、移民の受入が一家族にどのような影響を及ぼすのかを具体的に考えました。また、5人の教員による朗読劇を通じて、移民の受入に関する家族の一幕を垣間見、何とも言い難い、単純明解に判断できない事象が世の中にあるということを体験しました。

生徒の感想
・移民の人たちには、その人たちの事情があるように、受け入れる側にも様々な考えかたがあるから、どちらにしても軽々しく答えてはいけないと思いました。

・命がけできた難民を助けたいという思いは山々だけど、今の日本にその人々をすぐに助けられる施設や制度が完璧にあるわけではないので、不幸にしてしまうなら受け入れない方がいいのかなと思ったり、本当に迷いました。

・私たちは今、たまたま日本に生まれ安全に暮らしているけど、難民の人もたまたま生まれた国で殺される運命というのはおかしい。逆なら私たちも必死に助けを求めるはずだ。ならば、今の私たちも何か微力でも救いの手をさしのべてもいいのではないか。その努力はすべきではないかと思う。

担当者より
「人間とは何か、なぜ生きるのか」の問を、様々なジャンルの学問分野の講義やディスカッションを通じて考えてきた2年間でした。答えが見つかった人も、そうでない人も、このような知的体験を楽しみ、心を豊かにしてくれたらうれしいです。

英語科 武智美和子

 高校の学習には、「一定」の答えがあります。しかし、世の中を広く見たり、実際に社会に出ると、「答えのない問」の方が圧倒的に多いことに気が付きます。「答えが出ないんだから、やっても意味がない、考える必要もない」のでしょうか。

 世界には、80万人の難民がいます。どこかの国が受け入れれば、よいのかもしれませんが、その国にも国民が住んでいて、独自の文化を持っているのです。「難民の保護」と「自国民の安全」、我々はどちらを優先すればよいのでしょうか。政治面では?経済面では?文化面では?と区分していくといよいよ複雑になります。でも、この問題は我々の目前にまで迫っており、見て見ぬふりはできません。明確な答えを出せる人は少ないと思います。先生たちも一緒です。だからこそ、「知りたいな~」、「考えたいな~」と思いませんか。その好奇心から、「映画」を見る、「本」を読む、「インターネット」で調べるなど行動力に移せた人は、もう「人文科学」の一員です。

 このような好奇心や行動力をかきたてたいという一心で、2年間「人文科学の教室」を進めてきました。関心を持ってくれた生徒のみなさん、ありがとうございました。
 

地歴公民科 百々貴紀
 
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