3月1日(火)に本校にて第73回卒業証書授与式を挙行いたしました。今年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、教育活動における制限が多い1年となりましたが、3年間、勉強に、部活動に、学校行事に全力で取り組み、自主自律の精神で大きく成長した皆さんを心から祝福します。
以下に答辞を全文記載いたします。
答 辞
降りそそぐ陽が温かみを帯び、桂川の爽やかな風が草々をそよがせ、春が見え隠れする季節となりました。
このよき日に、私たちのため、このような素晴らしい卒業式を挙行していただき、先生方をはじめ、挙行に携わってくださった皆様に感謝申し上げます。
こうして私たちが、体育館で一堂に会していると、希望と、不安と、そして緊張を胸に秘めていた入学式が思い起こされます。様々なことを乗り越え、共に信頼を築き合ってきた仲間たちとも、あの日初めてことばを交わしました。それから三年。長いようで、短かった三年は、今となっては寂しさで苦しくなる程に積り積もったモノとなりました。
中学生の時よりも格段に広がった世界に、私たちは衝撃を受けました。増えた自由の分、重くなった責任。子どもだった私たちは、また一歩、大人としての道を歩めることを喜び、同時に、知らなかった厳しさに憂いました。先生方に教えていただき、先輩方に導いていただき、私たちは一喜一憂しながら、高校での生活を豊かににしてゆきました。
文化祭では、本番に向けて変わってゆく学校の雰囲気に乗り、少し勇気を出して新しいことに挑戦したり、陰で皆を支えたり、同級生や先輩方の見えなかった部分に高揚したり、感動したり。いっそこのまま、ずっと続いてくれないか、そう考えてしまう程、濃密で充実した時間を過ごすことができました。続く体育祭でも、文化祭から持ち越したエネルギーで培ったコミュニティーを更に広げ、ようやく桂高校の一員になれたのではないか、と一体感を感じずにはいられませんでした。
部活動や委員会活動でも、初めは何もできなかった私たちでしたが、少しづつ勝手が分かり始め、徐々に役目を任されることも多くなってゆきました。
勉学でも、難しくなった内容に四苦八苦しながら、仲間たちと、時には助け合い、時には競い合い、着実に力を伸ばしてゆきました。 また専門学科では、各種大会でも活躍されるような先輩の姿に感銘を受け、少しでも近づけるように、まずは基礎から学習を重ねてゆきました。
前だけを向き、ゼロから一歩ずつ歩んで来た一年間。ようやく、次のステップへのチャレンジを見据え、更なる成長を志した私たちに、二年生の四月はやって来ませんでした。 「新型コロナウイルス」が生んだ恐怖は世界中に瞬く間に拡がり、気付けばすぐ近くで息を潜めていました。
私たちが想像していた、上級生になった時の自分の姿。これまで受け継がれてきた伝統や形式、仲間たちと見せ合ってきた白い歯ですらも、全てはニュース速報の音と共に崩れ去ってゆきました。未来は暗闇にしか見えませんでした。
一ヶ月半遅れの二年生。マスク姿の後輩たちを、満足に迎え入れることはできず、新しいクラスメートとの親睦が深まる遠足も無くなりました。
湧き出した悲しみや苛立ち、怒りはどこにもぶつけられず、心に深く沈み積り始めます。やがて身体は重くなり、どうしても踏み出せない一歩。しかし、立ち尽くす私たちの背中は力一杯押されました。仲間が、家族が、地域が、社会が、私たちに寄り添いながら突き動かしてくれました。その時、やっと気付けた「温もり」は、今なお私たちの宝物です。
規模の縮小を余儀無くされた文化祭は、自分たちなりに向き合いました。行われることに感謝して、できることを探しながら精一杯取り組みました。
中止になってしまった北海道への研修旅行も、本当に苦しんで、何度も頭を抱えて、必死になって諦めました。
また普段の授業や、部活動などの日常の学校生活にも様々な制限のかかる中、許される範囲の中で挑戦を続けました。
専門学科では、基礎から発展した活動へと移り、積み上げた経験を糧に多種多様な研究を行うようになりました。各種大会や、より専門的な分野へと世界を拡げ、より精力的に取り組むようになりました。
三年生へと進級し、いよいよ高校生活の集大成とも言える進路実現に取り組み始め、ようやくその難しさを実感する時が来ました。いざ全貌を見てみると、それは例えようもなく、果てしなく映りました。予測不可能なコロナ禍と新しい共通テストによって視界も不明瞭でありました。そこに追い討ちをかけるように知らされた高校生活最後の文化祭の中止。目の前の世界は暗転し、心に嵐が吹き荒れました。それでも私たちが、この卒業式の場にたどり着けたのは、やはり周りの方々が照らしてくださった「光」があったからでした。
コロコロと変わる受験の制度や形態に私たちが惑わされぬよう、常に生きた情報を提供くださったり、経験に基づいた、打ち克つ為の方法論を説いてくださったり、また思い出作りと息抜きに、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」での活動を企画してくださったりと、いつも私たちを想って動いてくださった先生方の存在。
楽しい時も、辛い時も、どんな時でも温かく迎えてくれる。何の恩返しもできていないのに、どんなに迷惑と心配をかけても全力で支えてくれる。いつだって味方で居てくれて、いつでも帰れる唯一無二の居場所を用意してくれる。だからこそ何も考えずに頼ることができた、何にも代え難い家族の存在。 どんなことばでも言い尽くせない大きな感謝の気持ち。でもせめて言わせてください。ありがとうございました。
私たちが歩んできたこの三年間、歴史的な大変革を目の当たりにしたことで、私たちは、世界を新たに創ってゆく世代になりました。私たちが進みゆく社会という名の大海原の海流はすでに大きく変わり、それまでの海図はあてにならないのです。私たちは新たに海図を描きながら、嵐の中を複雑な海流の中を進んでゆきます。
しかし私たちは、帆の張り方を知り、船の直し方を学び、潮の読み方を教えてもらいました。人生の航海の手順は、ここ桂高校で培ってきました。勉学や部活動、行事や休校を含めたありとあらゆる経験。その中で得た、先輩方や、後輩たち、先生方や家族との信頼関係。どれもが、今私たちの糧となり、苦しい航海にも耐え得る原動力となっています。
私たちは今日、壊して、直してそれでも磨き続けた船に乗って、海図の無い旅へと旅立ちます。胸にこれまで支えてくださった全ての方々への感謝を抱いて。行ってきます。
令和四年三月一日
卒業生代表
三年一組 篠原 悠弥
三年六組 細井 颯汰