卒業式答辞

3月1日(月)、第72回卒業証書授与式が行われました。
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、送辞を読んだ代表生徒以外の在校生は出席しませんでした。以下に答辞を全文掲載しておきます。


答辞


厳しい冬の風に吹かれる中にも春の訪れを感じる季節となりました。本日は、私たち卒業生のためにこのような素晴らしい式を挙行していただきありがとうございます。
ほのかな春の陽気を感じると、自然と入学の頃が思い出されます。入学式の日、ぶかぶかのブレザーに身を包まれた私たちの表情は、慣れない手つきで結んだあの時のネクタイのように、どこかぎこちなく、不自然で、不安と期待が入り混じったものでした。体育館に一歩足を踏み入れる瞬間のとてつもない緊張を思い返すと、今でも胸の鼓動が早くなるような気がします。
高校入学に際しては、勉強についていけるか、部活動はうまくやっていけるか、そして友達はできるか、といった不安を誰しもが抱いていたことでしょう。中学の頃の友達と離れ、孤独を感じるときもありました。
そんな中で迎えた五月の遠足。小雨の降る中始まったバーベキュー。クラスのメンバーと楽しい時間を過ごすうちに、気づけば雨も上がり、入学の頃の不安は雨雲とともに晴れていきました。
部活動や、生徒会活動など、先輩の後ろ姿を必死に追いかけ、同級生とのつながりを深めていきながら、それぞれが桂高校の生活に馴染んでいきました。


二年生では、文化祭でクラス劇に取り組み、クラスに一体感が生まれ、一月の北海道スキー研修旅行は思い出深い行事となりました。辺り一面に広がる銀世界。初めは立つことがやっとだったスキーも、二日目には頂上から滑ることができるほどになりました。絶品の海鮮丼。こっそり食べたカップラーメンの味。遅くまで語り合った友達の意外な一面。北海道での思い出は今でもあせることなく鮮やかに甦ります。


高校最後の一年は、誰しもが高校生活を締めくくるに相応しい一年にしようと意気込んでいました。しかし、私たちの生活は新型コロナウイルスによって激変し、出端をくじかれてしまいました。学校に行って友達に会いたいのに会えない。勉強にも今一つ身が入らない。先の見えない毎日で、焦燥感に駆られることもありました。
そんな中、家族の存在が大きな支えとなりました。ダラダラしているときには、何度も喝を入れてもらい、前向きな気持ちを取り戻すことができました。
また、休校期間は、家族や自分自身と向き合う時間ともなりました。進路や、将来について、思いや意見が食い違い、衝突してしまうこともありましたが、そのときもらった意見やアドバイスは、自分の方向性を固めていく大きなきっかけとなりました。
部活動では、休校期間中も、自分にできることを考え、一人でトレーニングに励んだ人も多かったと思います。活動が大きく制限され、高校最後となる大会やコンクールが中止となり、断腸の思いで現実を受け止めた人もいたことでしょう。しかし、ここまで積み重ねてきた努力は無駄にはならないことを信じて、自分の弱さと向き合い、ひたむきに努力することの大切さを学ぶことができました。


そして六月、感染予防のために様々な厳しい条件がある中、ようやく学校が
再開されました。
学習面では、遅れを取り戻すべく色々と工夫をしてくださった先生方、本当に感謝しています。行事では、生徒の思いを受け止めて、文化祭の開催を決断していただき、ありがとうございました。
最後の文化祭は、全員が一堂に会することはできませんでしたが、思い出深いものとなりました。体育館での舞台発表もあれば、教室展示のクラスもあり、各クラスの持ち味が存分に発揮されたものになりました。みんなで協力して知恵を出し合い、アイデアを持ち寄りました。本番当日にはみんな、キラキラ輝くことができました。そして、仲間とこの上ない達成感と喜びを味わえました。


専門学科は、日々新たなことに挑み続け、葛藤を乗り越え、新しい自分を
発見してきた三年間だったのではないでしょうか。農業で誰かの支えになりたいと思い、晴れて一年生となった頃は、野菜や花の栽培について学ぶ座学や実習、農業クラブなど、慣れない活動に苦戦しつつも、仲間と共に協力して一つのことを成し遂げる喜びを分かち合うことができました。


二年生になると、新たに後輩を支える立場であることを自覚しつつ、課題研究授業のTAFSが始まり、日々研究活動に励んでいきました。特に企業や農家と連携して行った野菜や花の商品化に向けた事業や、持続可能な農業など世界の諸問題の解決に向けた研究活動は、自分たちの
可能性を広げるとともに、自分と向き合い成長を促す貴重な機会となりました。
月日が流れ、瞬く間に三年生となった頃、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、日本学校農業クラブ大会を含む外部のコンテストが中止となり、例年と異なる日々に不安が募るばかりでした。しかし、そんな状況の中でも屈することなく、それぞれがこれから歩む道を見つけることができました。


このように多くの経験を積み、充実した三年間を送ることができたのも、同期の仲間や後輩、先輩方、先生方、そして家族の支えがあったからこそだと思っています。私たちはそれぞれの道へと進みますが、この三年間で培った経験を生かして努力を惜しまず、これからも精進していきます。三年間、本当にありがとうございました。
私たちの高校三年間を一言で振り返るならば「変化」だと思います。私たちはこの三年間で多くの「変化」を経験しました。
一つ目は、入試制度の変更です。私たちはセンター試験に変わる大学入学共通テストの初めての受験者となりました。それに伴い、桂高校でも様々な取組がありました。
普通科研究コースでは、「KRP(桂リサーチ・プロジェクト)」が他コースに先駆けて開講され、私たちは記念すべき一期生となりました。
大学の先生、専門家から指導を受け、フィールドワークや実験を行い、発表を行うなどの探究活動に取り組みました。おそらく担当された先生方は暗中模索でのカリキュラムづくりで大変だったことと思います。感謝しています。思考力、表現力、コミュニケーション能力や、時間管理能力など、現代社会を生きる上で不可欠な力を身に付けることの重要性を
認識することができました。また、思考力、判断力がより多く問われるようになった大学入学共通テストにおいても、身につけた力を活かして健闘することができました。
二つ目は、新型コロナウイルスによる世界と生活の「変化」です。感染者数は指数関数的に増加し、多くの人々を死に至らしめました。著名人が感染・死亡したという報道を耳にする度、コロナウイルスの恐ろしさを思い知らされました。
「どう生き、どう自分の成長につなげるのか試されている。」
「自分で考え、行動し、自らの力で生き抜いていかなければいけない。」
「今は、社会に出るにあたっての予行練習ではないだろうか。」
この未曾有の事態の中で、将来についてしっかりと考え、社会に出る心構えをもつことができました。また、様々なことが目まぐるしく変化するこの社会で柔軟に対応しながら生きていくということは、日々成長することを意味していると気付きました。そしてそのことに気づけたことが何よりもの変化であり成長であったと思います。


私たちは高校三年間で数え切れないほど多くの人と出会い、お世話になりました。勉強だけでなく、私たち一人一人に正面から向き合い、ここまで導いてくださった先生方。教室で、たわいのない話で笑いあった友達。勉強や部活動で苦しいときは互いに支え合い、切磋琢磨してきたチームメイト。独りではなし得ぬことも、皆がいてくれたおかげでここまで来ることができました。
中国の古典に「麻の中の蓬」という言葉がありますが、周りに素晴らしい友達がいたからこそ真っ直ぐに伸びることができた、まさにそう実感しています。大切な友達との経験や思い出、そして何より友情はこの先ずっと消えることのない財産です。ありがとう。


いつも誰よりも近くで見守ってくれたのはほかでもなく、家族です。毎朝作ってくれたお弁当は、学校生活を送る上で欠かせないエネルギー源でした。疲れて帰った時、「おかえり」の一言はどんな言葉よりも安心感を与えてくれる言葉でした。本当にありがとう。


今日から、私たち一人一人の物語は新たな第二章へと続いていきます。私たちは、感謝の気持ちと桂プライドを忘れることなくこれからも耀き続けます。経験や学びを生かし、夢を叶えてみせます。別れのさみしい思いもありますが、ひとまずここで、この物語の第一章に幕を下ろします。


桂高校へ、最高の青春をありがとう。



令和3年3月1日
卒業生代表 3年1組 小西蓮華
      3年8組 吉永昴琉

 
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