京都府におけるスポーツ振興の在り方について
 
 はじめに
 京都府の体育・スポーツは、昭和63年の国民体育大会(京都国体)の開催を契機として、飛躍的な発展をみた。この開催に向けた取組は、京都国体後も府内各地域にスポーツ関係組織の充実とともに、特色あるスポーツ活動として定着し継続され、府民生活の活力源として大きく作用してきた。また、京都国体以降も国体において長年にわたり、ほぼ入賞を続けている現状は、国体を開催した都道府県の範として、高い評価を得ているところである。
 このように、スポーツが京都府の風土としてしっかり根付き、今日に至っていることは、他の都道府県に誇れる大きな特徴であろう。
 しかし、その間、われわれを取り巻く社会環境はめまぐるしく変容し、生活様式も大きく変化してきた。運動不足やストレスの増加、情報化社会の進展、自由時間の増大、高齢化の進展などにより、人々は、健康で明るく豊かな生活を強く求めるようになった。
 また、子どもたちにおいては、学校週5日制が完全実施となり、自由時間が増大してきたにもかかわらず、体を動かす機会の減少や生活習慣の乱れから、体格の向上に相反して、体力が低下するという憂慮すべき事態が生じている。体力は、子どもたちが豊かな人間性を培い、自ら学び、自ら考える、といった「生きる力」を身に付ける上で、極めて重要な要素である。次代を担う子どもたちの心身の健全な発育・発達のために、体力向上は、最も早期に解決を図るべき大きな課題の一つである。
 これら多くの課題を抱える現代社会では、スポーツに接することによって得られる効果は、極めて大きいと考えられる。スポーツは、人間の身体的・精神的な欲求にこたえる人類に共通した文化の一つである。人々は、スポーツに接することにより、そう快感や達成感、連帯感など、様々な喜びを味わうことができ、さらには体力の維持・向上や生活習慣病の予防、ストレスの発散など、心身の健康に対しても大きな効果が期待できる。
 また、スポーツをみんなで楽しむことは、世代間の交流をはじめ、地域コミュニティーの形成にも大きく寄与し、日々の暮らしの中で、心の結びつきやゆとりをもたらしてくれる。
 このようなことから、府民が明るく豊かで、いきいきと暮らせる社会を目指すためには、府民一人ひとりが自発的・日常的に、生涯にわたってスポーツに親しむことができる環境づくりが必要である。



 今後のスポーツ振興における基本的な視点
 本審議会は、昭和62年、府民が日常的にスポーツに親しむことができる京都府を願い、「21世紀に向けた京都府の体育・スポーツ振興の基本方策について(答申)」の中で、スポーツ振興の指針を「府民スポーツ」及び「競技スポーツ」の振興という二つの柱として位置付け、提言した。
 しかし、スポーツの意義や府民のスポーツニーズが多様化している現在、その振興の手法や考え方についても、より発展したものにする必要が生じている。
 また、「生涯にわたって学び、楽しめる社会の実現」という新京都府総合計画に示される生涯学習推進の観点からも、スポーツは、大きな役割を担うことができる。
 これらのことから、あらゆるライフステージにおけるすべての府民のスポーツ活動を「生涯スポーツ」として包括的に捉え、推進していくことが必要となっている。
 更にその中で、スポーツを始める時期や行う目的・志向に着目し、子どもの学校内外及び就学前も視野に入れた「子どもスポーツの充実」、競技者育成はもとより、「みる」・「ささえる」スポーツにもこたえ、夢や感動を府民みんなで共有できる「競技スポーツの充実」という二点を加え、ここでは三つの視点を設定することとした。
 
1「生涯スポーツの推進」
 すべての人々が、それぞれのライフステージに合わせ、身近にいつでもスポーツに親しむことができる環境をつくる。
 
2「子どもスポーツの充実」
 子どものころから身体を動かす楽しさやスポーツの愉しさを十分に味わうことにより、生涯にわたってスポーツに親しむ習慣や能力を培い、豊かなスポーツライフの基盤を育む。
 
3「競技スポーツの充実」
 国内レベルの競技会で常時上位入賞を果たせる競技者を育成するためのサポート体制を確立し、更に国際レベルで活躍できる競技者や指導者の育成を図る。