盲・聾・養護学校がセンター的機能を発揮して行う
 小・中学校への支援
 
 
盲・聾・養護学校が果たす役割
地域における教育的支援のセンター的役割
 地域における特別支援教育が進展し、特別な教育的対応を必要とする児童生徒への適切な支援が確実に為されるためには、小・中学校や関係諸機関を包含した連携のネットワークの中で、盲・聾・養護学校が地域における特別支援教育に関する中核機関としてセンター的役割を果たすことが必要である。「今後の特別支援教育の在り方(最終報告)」では、その専門性を十分に発揮して小・中学校等の教育活動を支援するなど、地域における教育的支援のセンター的役割を果たしていくこと』と述べられている
センター的役割を果たしうる盲・聾・養護学校へのバージョンアップ
盲・聾・養護学校であることを以ってセンター的役割が果たせるわけではない。センター的役割を果たしうる盲・聾・養護学校へのバージョンアップが求められ てい るという認識が必要である。府の「養護学校・地域等連携事業」における、「地域から信頼されるクリエィティブな養護学校」を目指すという京都府立桃山養護学校の取組はこの方向に大きく踏み出した取組である。
 重度・重複化、多様化した障害のある児童生徒の指導に関する多数の専門家がいる学校という従来の養護学校像を充実させつつ、プラスアルファする魅力を創出して、特別支援教育のリソースとして地域において大いに活用してもらおうという取組である。 (参考資料「障害児教育地域連携講座」参照)
小・中学校と盲・聾・養護学校との相互理解の必要性
 「センター的役割」は、指導‐被指導という縦の関係ではなく、連携と協働を通してより質の高い指導・支援を目指す中から培われるものである。通常の学級、 障害児学級、通級指導教室、盲・聾・養護学校の教師がそれぞれの立場を尊重して理解し合うことなく、連携や協働はあり得ない。
  相互理解のためには、各学校、学級の授業を参観し合うことが有効である。盲・聾・養護学校の教師が、小・中学校の通常の学級、障害児学級 、通級指導教室における具体的配慮や指導・支援の実際を参観することは、小・中学校の教育の実態を踏まえた実効性のある支援を行うために有意義である。小・中学校 を会場に、通常の学級の授業参観を含め実施した「LD等指導法講座T」(宇治市立南小倉小学校)、「LD等指導法講座U」(舞鶴市立福井小学校)は盲・聾・養護学校の教師に多くの示唆を与えた。養護学校を会場に授業参観を含め実施した「自閉症指導法講座T」(京都府立南山城養護学 校)、「自閉症指導法講座U」(京都府立丹波養護学校)及び「障害児教育地域連携講座」(京都府立桃山養護学校) から、小・中学校の教師は多くのことを学んだ。
センター的役割を果たすのに必要なこと
  盲・聾・養護学校がセンター的役割を果たすには、地域の信頼を得るに足る教師の専門性の向上と役割が発揮できる連携と協働の仕組みが重要である。「養 護学校・地域等連携事業」での桃山養護学校の取組では、「内には専門性の向上、外にはセンター的役割」と表現されている。
2 盲・聾・養護学校が発揮する機能
  「障害児教育地域連携講座」や「自閉症指導法講座T」、「自閉症指導法講座U」での実践発表等から、盲・聾・養護学校が地域におけるセンター的役割を果たす上でキーポイントとなる機能は次のように整理できる。
教育相談機能
(ア)  教育相談(来校相談と巡回相談)
  障害のある子どもの子育てや教育等に関して、小・中学校の保護者や担任の相談を行い、必要に応じてより専門的な相談機 関等の情報提供も行う。学校の 専門家チームが小・中学校に出向き巡回相談を行うこともある。高等学校も含め、通常の学級に在籍する児童生徒のLDやADHD、高機能自閉症等に関する相談も増加している。
(イ)  地域での生活支援に関する相談
 これまで培ってきた福祉に関する対応ノウハウを活用し、支援費のサービス内容や利用方法、放課後や休日の問題、保護者の急な用事での介護の問題等々、地域での生活支援に関する相談に対応する。
(ウ) 小・中学校教員へのコンサルテーション
 小・中学校教員に対しては、学校教育の専門家同士の立場から、障害のある児童生徒の状況の理解と適切な指導・支援の方法についてアドバイスする等コンサルテーションを行う。
小・中学校の教員支援機能
(ア)   校内研修等への教員派遣
 小・中学校等の求めに応じて、特別支援教育に関する校内研修等に教員を派遣し、蓄積してきた発達や障害の理解と対応に関する知見や指導・支援ノウハウを伝えたり、情報提供を行ったりして教員を支援する。
  特に、自閉症の指導・支援に関する考え方や指導・支援の具体的内容、方法・手立てに関しては多くの蓄積があり、高い地域のニーズに応えて、指導・支援に悩む小・中学校の教員を支援する。「自閉症指導法講座T」の南山城養護学校や「自閉症指導法講座U」の丹波養護学校のように、自閉症の指導・支援に関する専門性の高い知見や実践的な指導・支援のアイデアの提供は、 養護学校が行いうる研修支援の一例である。
(イ)   体験研修の受け入れ
 桃山養護学校では、小・中学校障害児学級担任が学習指導や子ども達への対応について直接学ぶ機会として小・中学校教員の「1日体験研修」を受け入れている。
(ウ)  個別の指導計画策定・実施ノウハウの提供
  Plan−Do−Seeのプロセスによる個別の指導計画の策定・実施に関するノウハウの提供も小・中学校の教員支援に有効である。
(エ)    教材・教具のアイデア・制作ノウハウの提供
 盲・聾・養護学校では多くの手作り教材を制作し、様々な障害の状態に対応した授業に活用している。児童生徒教の実態が異なるので、教材そのものの活用は難しい場合が多いと思われるが、アイデアや制作ノウハウは小・中学校でも生かせるものである。桃山養護学校では、小・中学校に教育機器や教材の貸し出しも行っている。(「盲・聾・養護学校自作教材・教具の紹介」を参照)
         
【参考】
   中央教育審議会の「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(中間報告)」(平成16年12月1日)では、特別支援学校
  (仮称)のセンター的機能の具体的内容として、@小・中学校等の教員への支援機能、A特別支援教育等に関する相談・情報提供機
   能B障害のある児童生徒等への指導機能、C医療、 福祉、労働などの関係機関等との連絡・機能、D小・中学等の教員に対する
   研修協力機能、E地域の障害のある児童生徒等への施設備等の提供機能の6つの機能 が挙げられている。


3 市町村における特別支援教育支援体制の充実と盲・聾・養護学校の参画
盲・聾・養護学校と小・中学校の双方にメリットがある支援
  「養護学校・地域等連携推進事業」での桃山養護学校の取組から、地域の障害のある児童生徒や保護者及び担任等に対して行った具体的な直接的、間接的 支援を通して、多くの場合それぞれの問題が軽減あるいは改善され、その結果盲・聾・養護学校が頼りにされて存在感を増し、センター的役割が進展するということが分かる。
  盲・聾・養護学校にとっても、具体的支援を通して、LD等の軽度知的障害の理解と対応についての知見が整理されより実践的なものとなり、小・中学校の実態 を踏まえた具体的で有効な支援の手立てのアイデアやノウハウが蓄積できるという利点がある。これらの利点は、盲・聾・養護学校の教育にフィードバックされ、在籍児童生徒の授業の改善・充実に活かしうるものでもある。
  桃山養護学校の取組においては、医師、大学教授、カウンセラー、福祉施設理事等の専門家よりなる地域連携協議会や支援チームを養護学校内に設置する等校区の市町の小・中学校や関係諸機関を包摂した連携のネットワークを志向する中で、特別な教育的対応を必要とする児童生徒への支援が成果をあげていることに注目する必要がある。
市町村における特別支援教育のリソースとしての盲・聾・養護学校
  「特別支援教育推進体制モデル事業」で指定されたモデル地域や推進地域の各市町村における支援体制は充実しつつあるが、盲・聾・養護学校の参画が軌道に乗っているとは言い難い現状がある。盲・聾・養護学校が上記のような支援機能を発揮して、市町村の小・中学校との連携と協働による具体的な支援に参画する なかで、各市町村における支援体制がより一層整備され、支援を必要とする児童生徒への支援がより一層充実することが期待される。