平成23年8月2日(火)・11月18日(金)
平成23年度小学校「体育の授業づくり」講座(奈良県連携)
小学校「体育の授業づくり」講座を奈良県立教育研究所と連携し実施しました。
三重大学の岡野 昇教授に講義や実技、研究協議を通して、「授業づくり」とは何かを学び、
実践的な指導力の向上につながる講座となりました。
運動の中心的なおもしろさ
野球の歴史的背景をたどると、日本に入って来たとき、「打球鬼ごっこ」と和訳されました。
打ったボールと競争し、ボールよりも早くベースにたどり着くことにおもしろさがあると考えると、
攻撃側がボールを打ったり投げたりすることによってボールを飛ばし、守備側がボールを捕って、
ベースまたは走者にタッチする。
「鬼ごっこ」の要素を授業に取り入れることで、子どもたちが夢中になる授業づくりにつながります。
一方では、運動の本質を見極めることも必要です。
例えば、陸上運動のリレーは、何をつなぐ運動でしょうか?
「バトン」でしょうか?「スピード」をつなぐことが、本質であると考えられます。
バトンパスに着目させるのではなく、スピードを落とさずに、トップスピードを維持しながら、
「スピード」をつなぐことに着目させ、タイムを縮めるところにおもしろさがあると考えみてください。
児童のリレーに対する意識がスピードに向けられ、タイムの短縮に夢中になると思います。
「運動の歴史的な背景」と「運動の本来の意味」を探ることが、授業づくりのヒントになると思います。

講座では、実際にペアを作って、10mのタイムを計測し、
2×10mリレーでタイムを計測しました。
二人の10mの合計タイムよりも2×10mリレーの方がスピードをつなぐことで、
早くなることを体験し、先生方もタイムの短縮に夢中になっていました。
児童の協同的な学び
「わかる」にはレベルがあります。
レベル1:自分で問題が解ける レベル2:友達に教えることができる レベル3:友達に意味を説明できる。 レベル4:友達の学びを支援できる (わからない原因を聞き出せる) 三重大学の岡野教授の講義から
|
レベル3までは、「教え合い」のレベルなので、レベル4の「学び合い」のレベルに高めていくことが、
指導者として必要なことと考えられます。
自己と他者の関わりの間に共感される「知」が生まれ、協同的に課題解決に取り組ませることを、
意識して授業を進めていくことが大切です。
手法として、ペア学習とグループ学習があります。
運動技能を獲得できている児童同士のペアでは、学びは生まれないと言われていました。
獲得できていない児童同士でも学びは生まれないと言われていました。
ペア学習を実施する際は、意識的に獲得できている児童と獲得できていない児童とのペアリングを発生させるようにし、
学びをはぐくみ、技能を獲得させる工夫が必要です。
グループ学習においても、普段の授業の様子から、学びが生まれるようなグルーピングを意識的に行うことにより、
授業づくりを進めてみてはどうでしょか。
公開授業
田原本町立田原本小学校において、公開授業を参観させていただきました。
グラウンドで5年生の走り幅跳びの授業が予定されていましたが、天候不良により、体育館で実施されました。


ジュースのダンボール箱を縦に並べて何個跳べるかな?
走り幅跳びの中心的なおもしろさを、ダンボール箱を並べて何個跳べるかに設定し、
グループ学習を通して、協同的な学びが生起するように工夫された授業でした。
学びを生起するため、グループ全員が踏み切りに注目し、どんな踏み切りがいいのかを
探るために、ロイター板を活用されていました。
授業者は、ふわっと浮く感じをつかませたかったようですが、ロイター板が硬く、
反発に負けてしまい、あまり効果が得られませんでしたが、踏み切り板の反発を感じて、
浮き上がろうという感覚が、踏み切り板を上から踏みつけるという良い感覚を生み出していたように思います。
最初は、跳び箱と間違えて、両足で踏み切る児童もいましたが、
練習を重ねることにより、だんだん慣れて、うまく跳べるようになりました。
左の写真の児童は、助走、踏み切り動作、空中姿勢、着地の各動作のバランスがよく、
5個跳んでいました。
研究協議

研究協議では、ロイター板を使用したことがあまり意味がなかったというところに意見が集中しました。
授業者からも説明がありましたが、ロイター板の反発を感じる強い踏み切りが生まれると
考えておられたようですが、ロイター版の反発を感じるところまで、強い踏み切りができなかったことを
振り返っていました。
岡野先生からは、協同的な学びが生起した児童がどういう行動を起こし、どんな会話をしていたか、
という授業参観の視点を学ぶことができました。
2個しか跳べない児童が跳んだ後に、同じグループの児童が歩み寄り語りかけている光景がありました。
「今の跳び方だと3個はいけるよ!次は3個並べて跳んでみたらどう?」
体育の授業づくりは、「児童が夢中になる体育の授業」を目指し、工夫することが今後必要のように思われます。
受講者の感想
・授業を参観する際の視点は、これまで自分が持っていたものとは大きく異なるものだった。
指導案に縛られず、自分の視点で見る。そして、どこで「学び」が生起し、どこで「学び」が停滞したか、
「学びの中心となる児童」からの関係の広がりなど、もう一度整理して今後の実践に生かしたい。
・今回2回にわたる研修を通して、ペア学習、学び合いがどういったものなのかを学んだ。
今回は「体育」という教科を通して学んだが、どの教科にも同じことが言える。
・教え合う授業が大切だと感じ、できるだけ様々な教科で、話し合い、教え合いをしてきたが、
さらに一歩進んだ学び合い「友達のつまづきを理解し、支援できる」ところまで高められるように、
教師として関わり方を工夫していきたい。
・体育の授業の中に、どのように話し合い活動を取り入れればよいのか、また話し合い活動を
取り入れることで、「運動量」を十分に確保できるのかという悩みがあったが、大切なことは
「友達にどういったアドバイスをしてあげると良いのか」という「学びの支援」ができるようにすることだと、
いうことが参考になった。